ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part41】聖樹の国の禁呪使い

 今回感想を書いていく作品は「聖樹の国の禁呪使い 」です。

 オーバーラップ文庫より2014年から2017年まで刊行されていた全9巻(未完結)のシリーズ。作者は篠崎芳。イラストは甘福あまね

聖樹の国の禁呪使い 1 (オーバーラップ文庫)聖樹の国の禁呪使い 2 (オーバーラップ文庫)

※画像はAmazonリンク(1巻および2巻)

 

 

作品概要

 まずはいつものように作品の概要。

 

 ""相良黒彦――クロヒコは気がつくと異世界にいた。

 右も左も分からないままに入り込んでしまった学園で、主人公はその世界で誰も読むことのできなかった「禁呪」の呪文書を読み、ましてやその力を使うことができてしまった。そのために禁呪使いとして聖樹士を育成する学園に入学することとなってしまう。""

 

 というのが大体のあらすじ。

 もうこれぞ、といった異世界転移ファンタジーですね。めちゃくちゃ分かりやすいです。発売年を考えれば当たり前といえば当たり前かもしれませんけどね。

 なので、これは悪いテンプレでは決してなく。ここから広がる展開がこの作品ならではの個性があり、この導入部は作品に入り込みやすくするためのテンプレとして上手く働いていると思いました。

 

 では、少しづつ詳しく内容を追って、この作品の魅力3点を挙げていきます。



1:激アツバトルシーン

 この作品のバトルシーンはとにかく激アツ展開ばかりです。

 

 その理由が単純明快で、敵が常に主人公たちよりも強いから。

 

 というか、1巻からもうシリーズを通してのラスボス的立ち位置のキャラと戦いますし。その1巻で対峙する戦闘狂の男、これが9巻の段階においても作中で圧倒的な最強キャラに君臨するようなレベルで、そんなのと1巻で戦うわけですよ。

 当然勝てるわけがない。しかし負けるとわかっていても逃げない、退かない、何としてでも一矢報いるためにあがく。

 これが面白くないわけがないんですよ。

 

 そして、1巻からラスボスレベルの敵と戦い、その後も常に格上の敵と戦う。王道バトルマンガのような敵がだんだん強くなる、なんて展開はこの作品にはないのです。

 故に、主人公のバトルシーンはいつだって死ぬか生きるかの戦い。

 熱い。熱すぎる。超面白い。

 

 また、最初から強キャラがどんどん出てくるのは、バトル作品でよく考える「最強キャラは誰だ」「こいつとこいつが戦ったらどうなるんだ」という部分が最初から考えられるということで。

 実際に、終盤ではその思い描いた対戦が見られるのではないか、という期待にものすごく刺激されてしまう。

 


2:キャラの魅力

 続いて、このバトルシーンにも通じる本作の魅力、キャラについて話します。

 

 まず本作のキャラは主に二種類に分類できるのです。

 狂人グループか一般人グループか、です。

 

 はっきり言って、この作品の強キャラはほとんどがイカれてるんですよ

 1巻で戦うラスボスからして戦闘狂ですし、それぞれが強いが故の信念、あるいは執念、生き様、存在意義のようなものを持っていて。それに従った戦いしかしないのです。

 そして、これが主人公クロヒコにも適応されまして。クロヒコの信念は、自分の大切な人たちの敵は全て殺す。そのためだったら自分の死すら厭わない。というもの。その信念に従って、代償アリの能力である禁呪を惜しみなく使っていくんですよね。

 そんなキャラたちの戦いには、お互いに譲歩なんてものはあるわけがなく、その生き様をどちらが貫き通すかしかないわけで。

 すると、先ほど述べた強敵との闘いというだけでハラハラするバトルシーンが、この信念を曲げないキャラたちの想いも乗って一層に面白さを増していくのです。

 

 しかし、このイカれっぷりはあくまで強キャラたちの間の話であって。

 強さが一般程度、ヒロインたちの強さくらいのキャラは、ちゃんと普通の感性を持っているんですよね。これがいわゆる一般人グループのキャラです。

 わたしは、この二種類のキャラがいることによって、その対比でイカれているキャラも普通のキャラもそれぞれの立ち位置というのがしっかり際立ってくるのが読んでいて面白いポイントだと思っています。

 例えばですが、主人公たち狂人グループの人の戦いは常に生きるか死ぬかの戦い。一方でヒロインたちの学生レベルの戦いは勝つか負けるかの戦い。戦いの質が違えば、必然そこに宿る緊張感や緊迫感の方向性も全く変わってきますよね。

 しかし、どちらもファンタジー作品としては面白い”バトル”になってくるんです。

 そうなると本作は二種類のバトルの醍醐味を存分に味わうことができる作品といえるでしょう。

 

 他にも、主人公とヒロインの関係を見ると。

 先程述べた主人公の信念、主人公は禁呪という自らの身を滅ぼす代償を持つ力を使うため、本当に相打ち覚悟で敵を殺していくわけですよ。そんな自ら破滅に向かいかねない主人公を支えたいと想うヒロインの心があって、するとラブコメ的な部分でもこの作品の魅力が見えてくる。

 本作は1巻表紙のヒロインキュリエと、2巻表紙のセシリー。二人が主にメインヒロインとなって物語が進んでいます。そしてキュリエは狂人グループ、セシリーは一般人グループのヒロインで、それぞれの立場だからこそ主人公に対して向ける想いが生まれてきます。最初からともに強敵と戦う相棒のようなキュリエ、力が足りないから彼と一緒に戦うことはできないけれど少しでも成長して支えたいと願うセシリー、といった感じでしょうか。Wヒロインモノとしてみても、この二人の対比が上手くハマっているように感じました。



3:展開構成

 対比という部分でこの作品の最後、3つ目の魅力である展開構成について。

 

 もう既に述べたように、この作品は異世界転移ファンタジーです。そして主に「襲い来るラスボス級の敵たちと戦うお話」と「学園ファンタジーとしてのお話」の2つの軸で物語は進行していきます。

 

 そして述べたように主人公クロヒコは狂人グループの人間なので、彼は主に前者の強敵との戦いが中心になるんですよね。1巻からバトルバトルバトルですよ。するとどうなるか、主人公はその世界一般の学生レベルより圧倒的に強くなる。

 すると、いざ少し強敵とのバトルが落ち着いて、もう一つの物語軸である「学園ファンタジー」に移った時に面白い事態が起こってしまうのです。

 それが本来学園ファンタジーとして序盤に行うような遺跡探索や闘技会があっても、主人公が強すぎて秒で終わっちゃうんですよね。言っちゃえば、強くてニューゲーム状態です。

 学園ファンタジーのテンプレイベントが、テンプレになれないのです。

 しかもこれって最初から主人公強すぎて学園のイベント余裕です、ではなくて。強敵との死線をくぐり抜けてきたからこそ学園のイベントが余裕になってしまっている。という最初からラスボス級の敵と戦うという本作の軸がしっかり理由となって、テンプレをテンプレでなくしている、この作品の個性にしているんですよ。

 これが個人的に「学園のイベント」「強敵との戦い」というどちらもファンタジー作品でのテンプレだけど、その順序を変えるだけで、こうも味わいが変わるのかと感心した部分です。

 

4:巻別満足度と総合評価

 最後に本作の巻別満足度と総合評価です。

 

 まずは巻別満足度。

 基本的にバトルシーンで強敵とぶつかる巻は面白い作品。

 そしてその大きな盛り上がりとなるのが4巻、6巻、8巻と言った辺りですね。また1巻からラスボスレベルの敵と戦うような作品でもあるので1巻から十分な面白さがありました。

 

 そして総合評価です。

 シリーズ全体を通しての満足度は ★7.5/10

 シリーズが途中で終わってしまっているのがやはり痛手ですね💦

 

おわりに

 というわけで、まとめます。

 

・最初からラスボスレベルの敵と戦うバトル展開が熱い!

・そしてそんなバトルを繰り広げるキャラたちの個性が強い!

・最初からラスボスレベルの敵と戦う、ここから派生する様々な展開がこの作品独自の魅力になっている!

 

 聖樹の国の禁呪使いはこんな感じの作品です。

 個人的には非常に面白いファンタジー作品と思いました。

 しかし、唯一にして最大の欠点が「完結していないこと」。いわゆるエタってる作品ですよね……。

 

 まぁ、しかし面白いのは間違いないので、1度気になったら読んでみてほしいですね。

 

 今回の感想は以上でおしまい。

 最後に1巻のAmazonリンクとBOOKWALKERのリンクを張っておきます。

 

Amazonリンク

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BOOKWALKERリンク

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