ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part83】週に一度クラスメイトを買う話

 今回の感想は2023年2月のファンタジア文庫の新作「週に一度クラスメイトを買う話」です。

 ※現在2巻まで発売中(2023年6月)、今回は2巻まで読んでの感想です。

週に一度クラスメイトを買う話 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ (富士見ファンタジア文庫)週に一度クラスメイトを買う話2 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ (富士見ファンタジア文庫)

 ※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 彼女――宮城は変だ。週に一回五千円で、私に命令する権利を買う。一緒にゲームしたり、お菓子を食べさせたり、気分次第で危ない命令も時々。秘密を共有し始めてもう半年経つけれど、彼女は「私たちは友達じゃない」なんて言う。ねぇ宮城、これが友情でないのなら、私たちはどういう関係なの?

 

 あの人――仙台さんでなければいけない理由は、今も別にない。私のふとした思い付きに彼女が乗った、ただそれだけ。だから私は、どんな命令も拒まない彼女を今日も試す。……次の春、もし別のクラスになったとしても彼女はこの関係を続けてくれるだろうか。今は、それがちょっとだけ気がかりだ。

 

感想

 あー、いいですねこれ。

 このどっちがどっちに溺れていってるのか分からない感じというか。曖昧なまま進んでいく関係性っていうのがそこはかとなくえっちです。

 

 本作はあらすじでも述べられているように、1回5000円で宮城(黒髪ショートの方)が仙台さん(茶髪ロングの方)の放課後の時間を買うようになったお話。その経緯は本当に偶然、たまたまと言えるものでした。

 

 しかしながら、そんな関係を続けている理由と言えば?

 宮城は父子家庭で、父は仕事でほとんど家にいない。一方の仙台さんは、学校では優等生を演じながら、家では優秀な姉と比べられて。どっちもどっちで普段の生活には何かしらの暗い気持ちがあるようで。

 だから二人だけでいる間は何かに縛られない気楽な時間のように思える。もしかしたらそれだけ。友達だからとか、相手が好きだとか、そんなことは無くて。宮城が仙台さんの時間を買い続けるのも、仙台さんがそんな訳のわからない宮城に付き合うのも、きっと大きな理由なんてない気まぐれとかたわむれみたいなもの。

 だからこそそんな二人の時間がある意味で日常、ある意味で不健全な非日常を共存しているようで、この曖昧模糊とした空気がすごく良いのですよ。

 

 足を舐めてとか命令する宮城。

 嫌そうな顔をする仙台さんを見ているとどことなく優越感。

 一方で、命令を受けながらたまにイタズラで反撃する仙台さん。

 宮城はどんな反応をするのか、迷惑そうにするのかちょっと気になる。

 そんなそれぞれの複雑で形の定まらない感情を、それぞれの視点でしっかり描きながら近づいたり離れたりする距離感の情緒を存分に感じられました。

 だからこそ、好きというわけでもなく、友達というわけでもなく、まして恋人でもない、そんな二人がたどり着いたキスという行為にそこはかとないえっちさを感じますし。そんな二人のすぐに切れそうで切れない関係がどう揺らいでいくかが楽しみで仕方ない。

 

 そして2巻では更にこの揺らぐ関係性の波が大きくなって味わい深くなっていました。

 元々「放課後限定」という話だったのが、夏休みになっても仙台さんが宮城の家庭教室をするという名目で二人の密会が続き。さらにそれまで宮城の部屋のみの時間が、千代さんの部屋や普通のお出かけにまで広がっていってしまう。

 個人的にキーだと思うのが、最初に述べたような家庭事情とか背景にはお互いに不干渉であろうとすることで。二人の時間に対してそれぞれが求めている感情は絶対にそこに起因しているものなはずなのに、そこに踏み込まないから絶対に相手の本質に触れることはないっていう。だからその感情にも関係性にも答えが出ない。

  それでもなお、二人はそんな曖昧なままに二人だけの時間を重ねて、何か違う気がする、何かがおかしいと思いながらもふらふらと結局引き寄せられて深みにはまってしまっている感覚、これが個人的に堪らない。

 えっちと言いたくもなります。直接的な行為をしたり、恋愛とか性欲的な感情を持ったりすることがえっちの十分条件じゃない、のだと思わせられますね。……いや、キスとかはしてるんだけどさ。

 

 ともあれ、一言でまとめると、

 宮城と仙台さん、二人の名前のない関係性に情緒を揺さぶられる作品。

 これはすごく良かったです。

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★☆ (9/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 素晴らしい百合を摂取できました大満足!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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