ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part99】獄門撫子此処ニ在リ

 今回の感想は2023年8月のガガガ文庫新作「獄門撫子此処ニ在リ」ですね。

獄門撫子此処ニ在リ 獄門撫子此処ニ有リ (ガガガ文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用)

 獄門家――地獄より現れた血族。怪異ひしめく古都・京都を根城とする彼らは、呪術を操る胡乱な者どもはもとより、化物にすら畏怖されていた。

 そんな凶家の末裔たる乙女――獄門撫子は、化物を喰らうさだめの娘。

 荼毘の炎から取りあげられた、このうえなくうつくしく――このうえなく、忌まわしい娘。

 

 しかし……

 「撫子か。なるほど、その名の通り可憐だな。」

 このうえなく奇妙で、胡乱で、美しい女――無花果アマナ。

 自らを恐れもせずに笑う彼女との出逢いが、撫子を変えていく。

 

 花天井に潜むもの。箱詰される人身御供。学園にあざなえる呪い。人を幻惑するけもの。かたちなき化物。

 次々と怪異に挑むうち、二人はやがて目を背けていた己そのものと対峙する。

「あなたさえいなければ、わたしは鬼でいられたのに。」

 鬼の身体にヒトの心を宿す少女と、ヒトの身に異形の魂を抱える女。

 二人のつむぐ縁が、血の物語の封を切る。

 TYPE-MOON武内崇氏も認めた、おそろしくもうつくしき、少女鬼譚。

 

感想

 少女鬼譚、そう銘打つ本作は鬼や怪異を中心にした濃厚な世界観が広がる中で二人の少女が紡ぐ百合の風味に満たされる、そんな作品でした。



 おおまかなストーリーとしてはあらすじにあるとおり。

 改めてわたしの言葉でまとめれば、

「鬼の末裔である獄門家と呼ばれる家に生まれ、化け物を喰らわねば生きられない少女、獄門撫子(ごくもん なでしこ)。

 彼女は自分を含むそういう生業の人々が呼び出されたとある怪異事件を通じて、無花果アマナ(いちじく あまな)に出会う。

 獄門という周囲から畏怖される自分に対しても普通に接する、どうにも得体が知れない不思議な彼女に撫子は興味を惹かれる。

 一方でアマナもまた撫子に興味を持ち、怪異事件で退治した化け物の肉を食わねば生きられないという撫子に、そういう問題が起こる情報を提供するから事件解決を手伝ってほしいと提案する。

 そうして二人は次々と怪異にまつわる事件の解決に挑むのだった。」

 と、いう具合でしょうか。

 

 いくつもの事件を連続して解決していくような構成なので、小さな起承転結のくくりがはっきりしている。そのため世界観や設定を存分に詰め込んだ作品ではありますが、読みにくいと感じることはあまり無かったのが好印象。

 また、それぞれの事件を通じて、最終的な問題となる撫子とアマナそれぞれの抱えるものを少しずつ明らかにしていて、しっかり先の展開が気になるという気持ちが続いていたのも良かったですね。



 そして、本作において注目したいのはやはり撫子とアマナの関係性。

 

 まずは主人公の撫子。

 化け物を喰らう娘であり、家族からも距離を置かれ、友人はいない。そんな中でも普通の人間らしくを常に意識しているような女の子。

 それゆえに、日常パートの描写1つ1つがそんな彼女の意識を現すような普通の女の子らしさが見えてこれがすごく可愛らしいです。挿絵のあるシーンなんか、特に、そのあどけない表情が見えて最高よ?

 それに本来化け物以外を食べてもどうしようもない体質だけど、普通の食事をめちゃくちゃ美味しそうに堪能している姿が良いですよね。そういう意味で、案外飯テロパワーのある作品だったりもするんですよ。こういうのわたし大好き。

 

 続いて、撫子が出会うアマナ。

 彼女は常に自分の心を明かさないミステリアスな人物として描かれています。

 しかし、撫子と事件を共にする中でその内面が少しずつ明かされ、撫子とは違う意味で普通の人間のはずなのにそうあれない理由が見えてくると、それまでベールに包まれていた弱みも強さも分かってきて一気にキャラの魅力があふれ出てくる。

 ただ、その終盤に至るまでも、シリアス以外では素直で可愛い撫子と、そんな撫子をいいように手のひらで転がす年上のお姉さんという組み合わせがハマってて、二人の会話劇見てるだけで楽しいんですよ。

 

 そんな撫子とアマナの関係は、最初こそ取引から始まったような形だけど。

 お互いに興味は惹かれていた程度の認識が、時間と共に変わっていって。けれど、本人たちにはその自覚がない。お互いに事情抱えて、友達がそもそもいなかった撫子と、自分のことを常にはぐらかしてきたアマナだから、それも仕方ない。

 だけどそうであったからこそ、二人は引き合うのです。

 そして、気づいたときには、もう離れられなくなっている。

 なんて素晴らしい関係か!

 殺伐とした世界に身を置く二人の少女から放たれる百合の波動が実に美しい!!

 

 そんなわけで、キャラ重視で見るわたしとしてはかなり百合味の部分にフォーカスした感想になってしまいますが、とても楽しむことができました!



 あと、少しだけ細々したので話したいこととして2点ほど。

 

 まず1つ、個人的に結構好きなキャラとして、撫子の叔父さん。

 撫子のことを野良猫と呼び、普段から彼女に厳しく、同じ家族であることを否定するような態度ばかり取る男なんですけど、案外面倒見がいいというか。撫子に作りすぎた料理を持ってきたり、撫子に問題が起こると自分にまで危害が及ぶかも知れないと言って色々手を回したり。

 正直に「ツンデレかな?」と思う姿がなんか可愛い。

 

 続いて1つ、冒頭の口絵と作中の挿絵以外に、キャラの立ち絵と簡単なプロフィールみたいなものが充実してること。

 シンプルに嬉しい配慮ですよね。ラノベって案外サブキャラみたいな立ち位置だと挿絵に含まれないってことが多々あるので、そういうキャラもしっかりデザインされていると話の解像度上がりますし。

 

総評 

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻以降への期待・・・★★★☆ (7/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 少女二人の関係性が良い百合味でした

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp