今回の感想は2023年3月のMF文庫Jの新作「魔女の怪談は手をつないで 星見星子が語るゴーストシステム」です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
「その怪談、もっと怖くしようよ!」
僕の日課は深夜のファミレスで幼なじみの人気配信アイドルの星子ちゃんを喜ばせるため、『オカルト』話を語ること。
「幽霊にも指紋があるはず!」
「水って海水なのかな?それとも水道水?」
怖い話を変わった方向から追及する少し不思議なところもあるけれど……、やっぱり星子ちゃんはかわいいなあ。大好きすぎる。
怪談のディテールを求める彼女との楽しい時間はこれからもずっと続くはずだった。
あの夜、自称魔女の語る怪談を聞くまでは。
「『魔女の怪談話』には絶対的な3つのルールがある!」
「ひとつでもやぶるとどうなるんだい?」
こうして。
――“僕”にとって最期の夜が始まった。
感想
うん、面白かったですね〜!
オカルト大好き配信アイドルの星見星子と、その幼馴染で主人公の少年。二人が「魔女の怪談」と呼ばれる、聞いた人がそれを実体験することができる不思議なオカルトと出会うところから始まるお話。
オカルト話のディティールにこだわり、そこに現実的解釈や、謎を謎のままに終わらせない「その怪談、もっと怖くしようよ」を口癖にする星子。そんな彼女の性質は、実体験できる魔女の怪談の中でも遺憾なく発揮されることで、
本作はいくつかの怪談話の体験編と解決編が交互に繰り返される連作短編のような形式を持っています。そしてそれと同時に、魔女の怪談が持つ3つのタブーとその奥にある真実へ触れていく1冊の大きなミステリも持っている。
この前者に関しては正直、それ単独でめちゃめちゃ面白い怪談話だとなることはありませんでした。
というより、後者の大きな謎に対する伏線だ、っていうのをむしろ前面に押し出しているような構成で読者から見ても「なんかこの描写変じゃないか?」「これは伏線っぽいな」と思わせる部分が多々ある感じでお話が進行していましたので。
なのでメインとなる後者の部分に注目すると。
これが中々に強烈なインパクトがあった。
それもオカルトやホラーの恐ろしさではなく、人の心の闇が生み出すファンタジーによる衝撃と言った感じで……、結局いちばん怖いのは得体の知れない何かよりも現実にいる人間なんだよ、みたいな感じ。
数少ない主要キャラそれぞれの意図が交錯して真実に辿り着く終盤は非常に読み応えがあって良かったです。実体験できる怪談話という性質も使った、物語と現実が曖昧になっている入れ子構造のような感じもフィクションらしさがあって個人的な好み。
そして最後の1ページまで気を抜いてはいけない。
二転三転しながら「うへぇ……」と言わせるような展開が何度もやって来て、本作の旨みを存分に味わうことができたと思います。
また1冊で綺麗にまとまっている作品だったのも、この満足度に繋がっていたと思っています。
総評
ストーリー・・・★★★★ (8/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★★★☆ (9/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻以降への期待・・・★★★ (6/10)
総合評価・・・★★★★(8/10) キャラと設定を上手く活かしたオカルトファンタジーでした!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
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