今回の感想は2023年11月のファンタジア文庫新作「彼女でもない女の子が深夜二時に炒飯作りにくる話」です。
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あらすじ(ファンタジア文庫公式サイトより引用)
主人公は高級マンション住まい、高身長、高学歴――でもヒロインは!?
「可愛い私めが炒飯作りに来たんですから、中に入れてください」
俺と同じ神戸市の国内有数の進学校に通う高校二年生で、さらには首席で特待生――桐原銭子の来訪に俺は迷惑していた。
だって深夜二時だよ。しかも俺は別に桐原と付き合っていない。
「私は藤堂君なら性的に無茶苦茶にされてしまっても構わないのですが」
いや、俺の両親の前でマジでいらんこと言うな。
「キスしましょうか。藤堂君。鳩のように情熱的なキスですよ」
「桐原銭子は一度受け取った以上は返品が利かないんですよ!」
知らんし。俺はお前の告白を断ったはずだよな。
好きな女の子からの好意を拒絶し続ける青春モラトリアムラブコメ開幕!
感想
想像の斜め上キタコレ!
読み進めると指数関数的に面白さが滲み出てくる快作で怪作ですね!
読む前こそウェブ初作品にありげなタイトルで、普通に恋愛モノだろうかと、どんなものかと思っていましたが開始早々にそんなイメージは間違っているのがよく分かる。
癖の強すぎるヒロインの言動と、それ以上にどこか堅い印象のある常体で地の文を綴る主人公のひねくれた思考回路、そんなものに彩られる本作は明らかに普通じゃない。
この主人公、ともすれば人の心がないとか、偏見が強すぎて性格最悪とも言えるような態度ではあるのだけど、”なんでそんな性格になってしまったのか”がちゃんと序盤から家族の日常描写の中で分かるようになっているんですよ。
だからこそ、ちゃんと続きを読ませる力がこの作品にはある
ここからどんな話が掘り下げられるのか、主人公にはしっかりバックボーンがあることが分かるのならヒロインはどうだろうか、ラブコメである以上この癖の強いヒロインや主人公の持つ関係性にはどんな背景が隠されているのか、そういう部分でちゃんと読者の興味を引っ張っていくのです。
実際に読み進めれば、たしかに癖は強い。
人によってはこの奇天烈さを苦手とする人もいるかもしれない。
でも、期待を裏切ってはくれなかった。
主人公が裕福の中で生きて歪んでしまったのであれば、ヒロインはまた貧困の中で育ったからこその現在の性格であることがしっかり描かれる。そしてそんな二人だからこその奇跡的なかみ合い、お互いが心の底から向ける愛憎混じった複雑な感情の交錯というのがこれ以上無く読んでいて心地良い。
決して普通に恋愛をしたんじゃ決してたどり着くことのない、生まれも育ちも違う格差をもって出会った二人だからこそ芽生えたクソデカ感情の重い恋心は本当に素晴らしいと言えるでしょう。
本作について、作者はあとがきで「ちょっと頭が悪い人たちのラブコメ」「悪意のある人間のいないハチャメチャ乱闘騒ぎ」「ラブ1割、コメディ9割のラブコメ」「一皮剥けば色々情念や思考が渦巻いているキャラクター」とそんな風に称しています。
まさしくその通りでしょう。
そして、ここで分かるんですよ。
作者がちゃんと自分の描きたいモノを正しく表現できている本作が強くないわけがなかった。
主人公ヒロインだけでなく、ヒロインの親友たちも加わると、本当に癖の強いキャラだらけのコメディが前面に押し出され。
しかし、そんな癖の強さにはちゃんとバックグラウンドがあればこその、キャラとしての強みを確立する。
そしてそんな一人一人確かな人生を持っているキャラだからこそ生まれたラブがある。
ラブコメとして満点です。
最初にも言いましたが、これは指数関数的に面白さが滲み出てくる作品でした。
最初こそとっつきにくさを覚えるかもしれないけれど、それ以上に読者を惹きつけるものがあり、読み進めていくとその期待を裏切らないどころか想像以上をいくものがある。
非常に満足しました。
是非とも、この変なキャラたちだからこその、変な青春の続きを読みたいものです。
あと、個人的な気持ちとして。
炒飯が素晴らしいという話に共感!
マジであれは適当に野菜でも肉でも、かまぼこでもカニカマでも切り刻んで入れれば美味しくなりますからね。
個人的にはファミマの鶏つくね串を刻んで入れるのめちゃくちゃ旨くて好きです。あとはちくわとかカニカマは安くて旨いからいいですよね。
総評
ストーリー・・・★★★ (6/10)
設定世界観・・・★★★ (6/10)
キャラの魅力・・・★★★★★ (10/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻以降への期待・・・★★★★☆ (9/10)
総合評価・・・★★★★☆(9/10) 圧倒的キャラパワーで紡ぐラブコメが面白くないわけないでしょう!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。
最後に、本作を読むに至った経緯と感謝
ここからは、本作の感想とは関係ない小話です。
本作はX(旧Twitter)にて、キミラノの公式アカウント様からDMをいただき、献本という形で読ませていただいた作品になります。
普段からこうしてブログとXに自由気ままに感想を吐き出しているだけのわたしに、まさかこんなオファーがあるとは思わず驚きましたが、非常に嬉しくもあり、ありがたい限りでありました。
ただやはり最初は悩みました。
わたしは本当に自分の好みで作品の感想を語るだけなので、作品の良し悪しを伝えられるようなレビュアーでもなんでもないのですから。
読んだ上で好きでなかったら、どうしようかと。
……とはいえ、悩みましたが。
こんな貴重な機会逃す方が馬鹿馬鹿しい、というか献本してくれるっていうならもらうだろ、もらえるものはもらう、俗物とでも何でも言うが良い!
と、思ったので素直にいただきました。
読んで好きでなかったらそのときはそのときに考えよう。
最大限オブラートに包んだ感想を書く配慮はしましょう、とそう思っていたくらいです。
なので、そんな風に思ったわたしが今回こうして絶賛しているのは、いただきものとか関係なく素直な気持ちで書いた結果です。
改めまして、今回貴重な申し出をしてくださったキミラノ様に感謝を述べたいと思います。
ありがとうございました。