ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part107】ツンデレ魔女を殺せ、と女神は言った。

 今回の感想は2023年9月の電撃文庫新作「ツンデレ魔女を殺せ、と女神は言った。」です。

ツンデレ魔女を殺せ、と女神は言った。 (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 目が覚めたら、ツンデレ聖女の杖だった!? 俺、異世界転生で大勝利!!

 世界一のツンデレ愛好家を自負する俺は、気がつけば異世界の暗い森に埋まっていた。助けてくれた銀髪ツリ目美少女にお礼を言うと――

 「べ、別に、あんたのために助けたわけじゃないわ!」

 これは……ツンデレ構文! っていうか、俺の身体が杖になってる!? 至高のツンデレ ぶりを見せる彼女・ステラは聖女学園の生徒で、この聖法の杖(俺)の持ち主らしい。もう一生推すしかない!

 まずは人間に戻らなきゃ、と、この異世界を司る女神様のもとを訪ねたんだが――邪悪な魔女ステラを殺すのです――願いを叶えるためには推しを殺せって……?? 素直になれない“推し”か、異世界の平和か。そんなの答えは決まってるだろ? 

 ツンデレ少女とその杖(俺)の出会いが異世界の命運を左右する、禁断の学園ファンタジー開幕!

 

感想

 令和の時代に蘇ったツンデレ

 そう思えるくらいにコテコテのツンデレヒロインの一周回った新鮮さが良かったですね。

 もう、セリフの1つ1つがどこかで見たことのあるようなものばかり。

 しかし、そうであるからこそツンデレとはこういうものだったなと感慨に浸りながら見守ることができる可愛さがある。

 学園で誰もが当たり前に使える聖法を使う中、精霊に愛されず聖法が使えずに周囲から馬鹿にされていた。そんな彼女に初めてできた普通に会話できる相手は杖に宿った変態のオタク、すぐに変なことを言うし、困ることもあるけど、それでも彼女にとってそれがどれだけ心の支えになっていたか。けれど、それを素直に言葉にはできない。

 みたいな、こういうのはやはり良いモノです。



 本作は目が覚めたら、そんなツンデレヒロイン・ステラの杖に転生してしまった男の物語です。

 ツンデレ愛好家を自称する彼は、読者視点から見てもザ・ツンデレといったステラに大歓喜、一目で彼女を推しとして、彼女のために杖として協力することに。しかし、彼は世界を司る女神から、魔女であるステラを殺すように言われてしまう。

 無論、女神の言葉に耳を貸す主人公ではなく。

 一生懸命に不器用ながら努力するステラの姿を見ているからこそ、そんな残酷な世界に対しての怒り、ステラを守るという不動の覚悟で立ち向かおうとする。杖だからできることは少ないけれど、できることを精一杯にやろうとする姿は好感が持てますね。

 

 そして状況が状況故に、常に不穏な空気が漂いながら徐々に世界の謎に迫っていくストーリーはなかなか面白いです。

 とはいえ、世界には魔女の使う悪しき魔法と、女神と精霊がもたらす善なる聖法という二種類の力があるらしい。かつて文明が滅びるほどの魔女と神の戦いがあって、今では魔女が存在しないと言われている。……というような話が、中盤までで見えた段階でかなり察せたものがありましたけどね。

 ただそういうお察しな部分をを踏まえた上で、テンプレートなツンデレもそうですが、想像を外さない展開というものを素直に楽しむことができるように仕上がっていたのが個人的には良かったと思います。

 

 さて、ここからは少し本作でわたしが引っかかってしまった点について。

 

 まずは主人公のスタンス。

 ツンデレが大好きなことはその発言の数々からよく分かる。

 ただ、主人公は転生前にそのツンデレ好きを拗らせて、幼馴染が自分を好きだと勘違いして振られたという過去があるにもかかわらず、ステラに対してツンデレ最高ツンデレ最高って言い続けるのがどういう理屈なのかイマイチよく分からなかったです。

 たしかにステラは素直になれない女の子。そんなのは彼女の態度を見ていれば嫌でも分かる。側にいる主人公に分からないわけがない。ただ、自分に対する発言に関しては何か思う部分がないのかと。

 ぶっちゃけ、転生前に幼馴染に振られたという設定が対して物語に効かないのなら、必要なかったのではないかと思います。(もちろん、2巻とかでこの幼馴染にフォーカスするとかあるのかもしれないですが、それならそうで1巻の時点からそれを匂わすくらいに重要な部分だと思わせて欲しかったです)

 

 この設定1つあるだけで、こいつはツンデレ好きを拗らせて失敗しても懲りずにツンデレに執着している奴、という。

 なんといいますか、普通の会話が成立しないオタクの悪いところ、全部オタク語で会話しようとする痛い奴感が濃く出てるように見えるんですよね。

 すると、本来主人公のカッコいい部分として見るはずの「オタクだからこそ推しのためには命かけるぜ!」みたいな態度が、もしかしてこれはただ話が通じないで自分の趣味性癖を押しつけるだけの自己中思考の結果なのではないかと、疑ってしまいます。



 

 

 ーー以下、ネタバレアリーー



 

 続いて、本作の気になったポイントの2つ目。

 それはクライマックスのシーン。

 本作のお察しな部分の確信に迫る場所ですね。

 結論から言えば、女神は実はかつての魔女の一人だったという話です。

 そんな女神に対して主人公がお前は女神なんかじゃないと怒りを露わにするときに、その魔女の名前をアマンダと叫ぶわけですが……、これを見たときにわたしは「魔女アマンダって誰?」とポカンとしちゃったのです。

 というのも、アマンダという名前が女神の自己紹介のセリフで1回しか作中に出てきてなかったみたいでした。そこからも、主人公はずっと女神を「女神」と呼称していて、他の誰も女神アマンダ様みたいなことを言わない状況だったのでいきなり「魔女アマンダ」と言われても誰か分からないという。

 わたしは、アマンダがマジで初見の名前かと思って、TwitterのフォロワーさんにDMで「アマンダという名前ってどこかに出てましたか?」と聞いてしまったくらいです。そこで自己紹介のセリフで言ってますと教えてもらいました(本当に恥ずかしい話)。

 

 作中では、過去の魔女の逸話について話すシーンもあるのですが、そこでは魔女アマンダの名前は出てきません。魔女アマンダが、女神になっているという状況を考えれば、魔女アマンダの過去の情報は全て消されていると考えれば妥当なものとは思いますが。

 ただ、そうならそうで学校の授業で先生が「女神アマンダ様は~」とか言わせたりした方が良かったように思えます。

 

 あるいは、そもそもの構成として。

 魔女アマンダの名前だけは過去にあるけど、何をした魔女なのかはほとんど分かっていないくらいの状態にしておいて。女神はアマンダという名前を捨てて別の名前を名乗っている、あるいは名前を誰も知れないという不自然な状況にしておいて、終盤に近づくにつれて女神との会話から「女神の正体がその謎めいた魔女アマンダであった」と判明していくような形にすれば、誰でも素直に「魔女アマンダ」へ怒りをぶつけるシーンすっとを受け入れられると思うのですが。

 

 この、自分の読解力の問題でぐちぐち言ってるのみみっちいなと自分でも思いますけど……、わたしの中で、作品の感想としての大部分を「アマンダって誰?」が占めちゃってるから言わないわけにはいかないんですよ。

 

 あと、単純に読みながら思ってたこととして。

 「あ、これ絶対、魔女の歴史が改竄されてる系だな。女神が実は魔女だったりするかも。それどころか実はいまの世界で聖法と言われているものが全部魔女の魔法で、ステラが使うものが本物の聖法だから、女神(魔女)は自分の身を脅かす聖法を使えるステラを魔女に仕立て上げて殺そうとしてるのでは?」とか考えてました。

 女神が魔女だというのは合ってたけれど、それ以外は外れてしまったのが少し悔しかったですね。

 

 

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★ (6/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★ (6/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) 一周回って新鮮なツンデレが良かったです

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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