ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part94】異端審問官シャーロット・ホームズは推理しない

 今回の感想は2023年7月のオーバーラップ文庫新作「異端審問官シャーロット・ホームズは推理しない」です。

異端審問官シャーロット・ホームズは推理しない ~人狼って推理するより、全員吊るした方が早くない?~ (オーバーラップ文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

人狼って推理するより、全員殺した方が早くない?」「そんなわけなくない?」

 人に化け人を喰う怪異『人狼』が跋扈し、その魔の手に抗い『異端審問官』が戦いを繰り広げるイギリス。日雇いで働くジョンは仕事の最中、人狼を狩る異端審問官の少女シャーロットと出会い――そして殺されかけた。間一髪で本物の人狼を導き出したジョンはその観察眼を買われ、『推理しない』審問官シャーロットとバディを組むことに!? 

 最強の審問官を目指すシャーロットの猪突猛進ぶりに振り回されながら、ジョンは街の平和を脅かす人狼を暴き出す――!

 思考ゼロ秒の人狼狩り少女と紡ぐ人狼×推理×バトルファンジー、開幕!

 

感想

 うん、これは面白かったですね!

 人狼が人に紛れて生きるイギリスで、異端審問官と呼ばれる者たちがそんな人に紛れる人狼を暴き出し狩っているような世界観。そこで異端審問官でありながら推理しない暴走娘のシャーロットと、成り行きからそんな彼女の助手をすることになった一般人のジョンによるバディのお話でした。

 

 本作最大の魅力はやはりヒロインのシャーロットでしょう。

 脳筋というか、ポンコツと言えばいいのか「人狼が分からないなら容疑者全員ぶっ殺せば良くない?」と素で言うような子でして。しかし、これが決して字面から感じるような狂気というものを感じないのがポイント。

 というのも、この彼女のスタンスというのは人狼を狩る異端審問官として父から一心に育てられた彼女なりに思うことがあってのことでして。まぁ、残り半分は真面目に推理できないことの思考放棄なので、そこはアレですが……。

 ただ、シャーロットはジョンの理にかなった言葉にはきちんと耳を傾けるし、自分にはできない推理ができるジョンに対して素直にすごいすごいと言いますし。

 読み進める中で見えてくるシャーロットの芯っていうのは「幼さ」や「純粋さ」といった要素の方が大きいんだなと思うわけです。

 

 だから、シャーロットは狂人ではなく、どこまでいってもただのポンコツ暴走娘。

 あれです、愛されるべきバカに近いような感覚を覚えるんですよ。

 

 そうしてジョンと共に人狼との戦いを続ける中で自分の想いを理解してくれたジョンに対しての信頼が生まれていくと、それまでのただ逃げるための思考放棄でなく、その信頼故にジョンが頭を動かして、自分は彼を信じて突き進めばいいと「推理しない」意味が変わっていく姿。

 バディモノの華として、シャーロットの変化をしっかり見せていた。

 更に言うと個人的には、ここで二人の絆が深まったところで恋愛的空気を生まなかったことも重要なポイントだと思っていて。シャーロットの魅力である幼さ、純粋さ、真っ直ぐさというのが終始変わらないままに、しかしその内面は大きく変わって彼女の猪突猛進の中に強い覚悟や気高さを感じるようになっていた。これが読んでいて実に爽快で気持ちの良いものだったんですよね。

 

 そんなわけで、終始シャーロットという少女の真っ直ぐな魅力で溢れていた作品というのが本作の素直な感想です。




 とはいえ、キャラ以外の部分で二点ほど勿体ないなと感じている部分がありまして。

 

 まず1つは、物語の緩急。

 というのも中盤あたりからずっと人狼との戦いで、物語の山場が続いているような感じで、一息つける場所がないように感じたんですよね。内容的には一区切りっていうタイミングはいくつもあったのですが、そこでちゃんと山場の熱が冷め切らないままに次の山に行ってしまうんですよ。

 もちろん、終盤であればそういうのは怒濤の展開といって片付けられるものですが、中盤からずっとそれが続くのはちょっと読んでて疲れました。

 

 そしてもう1つは、世界観設定。

 本作は人狼が潜むイギリスというファンタジーだけでなく、シャーロット含む異端審問官たちは人狼を狩るために人体改造を普通にしてたり、女王ヴィクトリアは自身を全身機械化したマザーコンピュータとなり数百年に渡って国を治めていたりとSF、サイバーパンク的要素が数多くあったんですよね。

 個人的には折角ならこの要素をもう少し押し出しても良かったのでは無いかと。

 先ほども言いましたが、中盤あたりからずっと人狼との戦い一色だった印象がやはり大きいのですよ。バトルシーンでは当然ですが、人体改造をした異端審問官ならではの戦いになるのですが。そういうバトル以外で世界観を感じる部分がほしかったというワガママですね。

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★ (6/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★☆ (7/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) 推理しない暴走娘ヒロインの魅力の詰まった作品!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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