今回の感想は2024年1月のファミ通文庫新作「非科学的な犯罪事件を解決するために必要なものは何ですか?」です。
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あらすじ(BWより引用)
目が死んでいる以外特段目立つところのない女子高生・佐取燐香には家族にも隠している秘密があった。この世界には人並み外れた“力”を持つ者が存在すること。そして――自身もその一人であるということ。他人の精神に干渉する力をもつ燐香はその力を隠しひっそりと生きていくはずだったのだが……ある日巻き込まれたバスジャック事件で異能犯罪について独り捜査にあたる警察官・神楽坂と出会ったことをきっかけに、次第に異能犯罪の渦に飲み込まれていく――。ときどきポンコツな女子高生と正義にあつい警察官が挑む異能ミステリー、開幕!
感想
うんうん、しっかり面白かった!
こういうお話は好きですよ!
本作は、冒頭からいきなりバスジャック事件。
そこに巻き込まれた主人公の少女・燐香の胸中から始まります。
精神干渉の異能を持ち、平穏を望む彼女。巻き込まれた事件もそれとなく解決してしまえばいいかと、考えていたけれど。そこで世の中には超常的な力があり、それによって誰も解決できない事件があるのではないか。そんな風に語る、くたびれたおっさん警察官の神楽坂と出会う。当然、燐香はそれをスルー。しかし、それから度々巻き込まれる事件で神楽坂と出会って……。
これは異能の少女と、正義感に溢れるおっさんの二人が法で裁けない悪を裁くお話。
異能ミステリとはいうけれど、個人的には謎解きや事件究明よりも、世に蔓延る悪を裁くというニュアンスが強いように思えました。それを少女とおっさんという凸凹コンビでやるとなれば、やはり自然とワクワクした気持ちが湧き上がりますよね。
そんな設定のお話を、冒頭からバスジャックをサクッと解決できてしまうほどの精神干渉という明らかに主人公としてつよつよな女の子で見せてきたら、掴みは抜群じゃないですか?
そこから、少しの日常。続く事件。神楽坂との度重なる遭遇。そして、遂に巻き込まれる異能事件。と、しっかりテンポ良く展開を踏んでいき、非常に読み心地が良かった。1巻時点では、まだまだプロローグのような段階で、この作品世界思っているよりも闇は根が深そうだぞってくらいで終わっていますが、それでも今後への期待は十分。
ちゃんと1巻で満足できたし、続きも読みたいと思えます。
そんな本作ですが、主人公の燐香。
この子がとても良かったですよね。
人の精神に干渉できる。それだけで普通にファンタジーならチート能力だけど、それを使う本人がその悪辣さをしっかり理解しながら、自分の平和を守るためなら、悪人相手に使うなら遠慮することはないという心持ちがあること。これが本当に強い。
しかしながらその一方で、他人の心は読めて嘘をたやすく見極められるのに、自分自身は嘘が下手くそだったり。家族の気持ちは絶対に見ないと決めているために、思春期の妹の姉を思う気持ちにまーったく気づいていなかったりと。不器用な部分、若干のポンコツ要素も見えると普通の女の子なんだなと思えてとても可愛い。
何より、個人的に人の心を読める系のキャラが、絶妙に自分の近くにいる大切な人の気持ちに鈍い感じのやつはある意味で能力の反動(なまじ能力がある分、それを基準に相手を推し量ろうとしたり、能力がない状態での対人経験が単純に不足していたりするようなもの)を感じるのが好きなんですよね。
そんな彼女に出会った警察官のおっさん神楽坂。
彼も良いキャラしてました。
単純にまっすぐで正義感に溢れていて誠実である。それだけで人として好感は持てるものですが、彼自身がそうあろうとする背景には過去の事件があること。さらには人の悪性をこれ以上無く知る異能の少女が協力してもいいと思われていること、これによって彼の善性っていうのはよりいっそうに強固なものとして描かれているんですよね。
それから、結局どれだけの能力があろうと、燐香自身は身体スペック的にも社会的立場としても普通の女の子なわけだから。そこを守っていける警察官のおっさんというのは、これから二人で事件に挑むコンビとして非常に良い相性。しかし同時におっさんと女子高生という関係性はウィークポイントにもなりそうな気配がしていて、今後の二人の動きが気になるところですよね。
まとめていきますと。
展開ヨシ、設定ヨシ、キャラヨシ。
と満遍なく楽しむことができた作品となりますね。良かったです!
総評
ストーリー・・・★★★★ (8/10)
設定世界観・・・★★★☆ (7/10)
キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)
総合評価・・・★★★★(8/10) 異能少女とおっさんが悪を裁く!!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
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最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。