ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part145】ほうかごがかり

 今回の感想は2024年1月の電撃文庫新作「ほうかごがかり」です。

 ※1月2月で2ヶ月連続刊行しており、2巻まで読了済。今回の感想は2巻までを含めての感想になりますが、具体的なエピソードに触れる内容はないようにしています。

ほうかごがかり (電撃文庫)ほうかごがかり2 (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(電撃文庫公式より引用

 よる十二時、ぼくらは『ほうかご』に囚われる――。

 

 『ほうかごがかり ニ森啓』

 小学六年生の二森啓はある日、教室の黒板に突如として自分の名前が謎の係名と共に書き込まれているのを目撃する。その日の深夜十二時、自室。学校のチャイムが爆発的に鳴り響き、開いた襖の向こうには暗闇に囲まれた異次元の学校――『ほうかご』が広がっていた。

 学校中の教室に棲む、『無名不思議』と呼ばれる名前のない異常存在。ほうかごに呼び出された六人の少年少女は、それぞれが担当する化け物を観察しその正体を記録するために集められたのだった。絵が得意な啓は屋上に潜む怪異『まっかっかさん』を捉えるべく筆を手にするが……。

 鬼才・甲田学人が放つ、恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”。

 

感想

 これは面白かったですね!!
 怪談を扱う作品としての”怖いもの見たさ”の面白さに満ちていました。


 まずは、改めてわたしの言葉で本作の簡単な紹介。

 ””怪談の雛形たちが跋扈する奇妙な”ほうかご”の学校。
 そこに呼び出されたのは”ほうかごがかり”に選ばれた七人の少年少女たち。
 彼らに求められる”かかりのしごと”は、毎週金曜日の夜に”ほうかご”の学校で怪談の雛形を記録すること。
 記録された怪談はその活動が沈静化し、一方正しく記録されない怪談は徐々にその存在を大きくしやがてほうかごがかりの子どもを呑み込み、現実世界の子どもたちをも襲ってしまうと言う。
 果たして子どもたちは無事にこの”ほうかご”を抜け出すことができるのか・・・””

 と、そんな感じのお話です。

 

 まず、唐突に巻き込まれて、理由も分からないままに、自分が怪談の最初の被害者となるかもしれないなんて状況が恐ろしすぎませんか……。怪異の正体がどうあれ、そもそも真っ暗な夜中の学校ってのが何が起こるか分かりませんし、わたしだったら物音1つにびくびくして絶対無理です。

 

 とはいえ、本作はその「怖さ」が売りでもある作品。

 雰囲気や設定、怪談の雛形となる化け物の描写。一歩でも間違えれば、その瞬間に自分の命が怪談に呑み込まれるかもしれないという状況。恐怖を膨らませるイラストの数々。そういう1つ1つからしっかり怖い雰囲気というのが伝わってくるというのは、それだけ作品の持ち味を発揮しているということ。怖いけど面白さになってます。

 

 そして本作のこの怖さ、ひいては面白さを引き出す最大の要素は、巻き込まれた子どもたちが全員小学生だということ。

 六年生、五年生。そのくらいの年齢になればこそ、正しく怖いものを怖いと認識できる。その一方で、まだまだ子どもであるために自分の手に負えない状況にはどうすればいいのかが分からない、そもそも本来大人たちに守られて育つ時期なのだからそんな状況になることがないでしょう。そんな子どもだからこその、戸惑いや恐怖というのは読者にもストレートに伝わってくるのです。

 

 さらに、本作は一人につき1つの怪談が割り当てられる設定上、キャラ一人をそれとセットになる怪談と掘り下げていく必要があります。そのためにその子が育った環境や、それ故の怪談への向き合う態度というものが、明かされていく怪談の正体とそれに向き合った結末というものへと常に結びついて描かれます。

 これが、もう本当に面白い。

 だって、怪談に呑まれるか、怪談に立ち向かうか、その意識の差を生み出すのは本当に些細な、それでいてどうしようもないくらいに大きい。小学生の子どもという、まだ世界が広がっていない時期だからこその、彼ら彼女らを育てた大人たちにほぼほぼ依存してしまっているってことで。そんなのもう、どうしようもないくらい納得できてしまうし、同じくらいやるせないとも思うじゃないですか。

 そして、怪談の真相が分かるのと同時にようやくその子の本質を除くことができる展開では、手遅れな状況だと分かってしまったときにはもう本当に救いようがない。最後の最後まで、この結末がどっちに偏るかが分からない絶妙な均衡で描き続けるのは、読者の”怖いもの見たさ”という気持ちをどんどん増幅させるのですよ。

 こんな形のエピソードを子どもたち一人一人順番に見せていくのだから、そりゃ面白いに決まってます。恐怖に疲弊していく子どもだからこそのストレートな感情をビシビシと感じながら、読者として同じ怖さに一緒に向き合っていくような感覚。一度、読み出すと手が止まりませんでした。

 

 

 最後にまとめます。

 怪談×小学生。小学生だからこそ生み出せる感情ってのが、こんなにも大きかったのだと実感させられました。文句なしで面白い、読み始めるとノンストップ、怪談の結末が気になって仕方ない、この作品は一体どんな結末に至ってしまうのか。

 そんな言葉しか出てきません。

 本当に大満足でした。

 

総評

 ストーリー・・・★★★★☆ (9/10)

 設定世界観・・・★★★★☆ (9/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10) 

 イラスト・・・★★★★☆ (9/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★★ (10/10)

 

 総合評価・・・★★★★☆(9/10) 怖いもの見たさが生み出す面白さ!! めちゃめちゃ面白かった!!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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