ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【シリーズまとめ感想part54】最果て図書館シリーズ

 今回感想を書いていく作品は「最果て図書館シリーズ」です。

 電撃文庫より2019年~2020年に刊行されていた全3巻のシリーズ。作者は冬月いろり。イラストはNamie

鏡のむこうの最果て図書館 光の勇者と偽りの魔王 (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク(1巻)

 

 

 最果て図書館シリーズは「鏡のむこうの最果て図書館」「湖底ゆらめく最果て図書館」「青空はるかな最果て図書館」の全3巻からなるシリーズです。

 1巻ごとに綺麗にまとまっているシリーズなので、今回は1巻ずつ感想を書いていこうかなと思います。

 

1巻 「鏡のむこうの最果て図書館」感想

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 うん、優しくて心安らぐファンタジー作品でしたね。

 

 本作はこれぞファンタジーというような、光の勇者と闇の魔王の伝説が伝わるとある世界パライナのお話。

 パライナの北端にはほとんど人の訪れない図書館があり、そこには本から生まれた小さな紙の魔物たちがいて世界中の書物を集めている。ウォレスは自分が何故ここにいるのか、そんな記憶を失ったまま最果て図書館の館長をしていて、その隣には感情の欠落したメイドの少女リィリがいる。

 ある日、図書館の倉庫にある鏡が始まりの町と呼ばれる場所で魔女見習いをする少女ルチアの鏡と繋がってしまう。鏡越しに相談を受けたり、他愛ない会話をしたり。やがて、新しい魔王と勇者が生まれて世界の危機が迫ってくる。

 

 ざっくりあらすじを紹介すれば、こんな感じでしょうか。

 

 まず、この設定とか世界観、良くないですか?

 勇者とか魔王というのは王道だからこそ、図書館や物語、お伽噺のようなテーマに合いますし。

 世界中の本が集まる図書館というのも夢のあるファンタジー設定、その本がどうやって集められているのかという理由が紙の魔物たちによる手作業というのがなんか可愛いし。

 そして鏡越しに繋がった主人公とヒロインという構図。言葉しか交わせないけど、仲良くなる様子も良いですけど。こういう場合はどういう風に対面することになるのかな、っていうのでワクワクする。実際、ウォレスとルチアが顔を合わせるシーンは最高でしたよ。



 ストーリーの方に目を向けると。

 本作の大きな鍵となるのは「ウォレスの失った記憶」と「勇者と魔王」

 短い1つ1つの話の中で少しずつ、この本題に近づいていくような展開をしていきます。

 

 まず、序盤は短編に近い形で描かれるそれぞれのお話が楽しめましたね。

 ルチアのお悩み相談だったり、リィリが拾った怪我した小鳥の話だったり。あるいは、新しく魔王討伐に向かうことになり、知恵を求めて図書館を訪れた青年と少女だったり。

 

 個人的にここで好きだったのが、それぞれの持つ性格。

 ルチアはとにかく優しい女の子。目の前で困っている人がいたら手を差し出さずにはいられないような子。それも魔女見習いとは言うものの、別に彼女自身に特別な力があるわけではなく、本作の主要キャラの中では誰よりも普通の女の子だったと思います。

 だからこそ、それでも優しくあれるというのは、すごいなと思ったわけです。

 最果て図書館なんて場所で、自分じゃ全く分からないような、ウォレスの事情だったり。世界の危機なんていうものに関わる勇者や魔王の問題だったり。そんなものに恐がりながらも一歩踏み出して言葉を交わそうとできるのがすごいですよ。

 

 リィリの事情は、共に最果て図書館にいるウォレスの失った記憶と同じく物語のキーになる部分なので、具体的には話しませんが。彼女もやっぱり優しい子でしたよね。感情の欠落した彼女はそれを自覚しないのでしょうけど、すごく優しいものだった。

 そして、これはまさかのメイドメインヒロイン作品だったのか? と言えるくらいの、読む前には思っていなかった部分で個人的ぶっささり要素が出てきたのでわたし大歓喜

 

 あとは勇者と、その仲間の魔道士ちゃん。

 サブキャラではあるけど、勇者の旅をする理由が魔道士ちゃんの持っているとある問題を解決するためという、カプ厨の好きそうな関係性を持ってて見ててニマニマしちゃうんですよね。

 

 

 

 で、そんな風に基本的にこの作品はみんな何かしらの優しさを持っている。

 そんな人たちと出会えたからこそ、ウォレスの止まっていた時間が動き出す。

 自分の失った記憶を取り戻し、そこで見た真実と向き合わなきゃいけない現実を知って……、そんな展開は素直に素敵なものだと思えます。

 また本作は言うまでもなく、ウォレスが主人公の物語ですが。

 サブキャラである勇者と魔王の物語、その裏で活躍したウォレスやルチアのような、物語だったら語られることはないだろう誰かの物語という側面も強く感じて、どんな物語も蒐集される最果て図書館なんて場所で始まった物語とのコントラストも良いものでしたね。

 

 

2巻 「湖底ゆらめく最果て図書館」感想

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 最果て図書館シリーズ第2巻。

 鏡の次は湖の底。ある日、図書館の空間の1つが、地底湖の博物館と繋がってしまう。そこには岩に繋がれたヒルダと名乗る女性の姿があり、彼女は狂ってしまった博物館の主マリーアンジュから逃げ出してきたのだという。

 マリーアンジュの目的は、この世のあらゆるものを自らの手に収めること。

 最果て図書館もまたその収集品の1つとして目をつけられているらしい。

 

 と、いう感じの2巻でした。

 

 今回も良かったですね。

 このシリーズの持つ優しさがしっかり発揮されていた。

 1巻と異なり、目に見えるような優しさではなく。空回って暴走してしまっていたけど、ヒルダもマリーアンジュもそれぞれの思いがしっかり見えてくると好感が持てて、やっぱりこの作品のキャラは良いなぁって感じました。

 

 それから、今回は図書館を守るための戦いになるわけですけど。

 そうなるとウォレスやリィリががんばるのはもちろんですが、本から生まれた小さな魔物たちの活躍も多くて楽しかったです。

 欲を言うと、魔物たちの描かれたこの辺りの挿絵がもっといっぱいほしかったくらい。

 だって、これヴィジュアルあったら絶対可愛いやつじゃないですか。お伽噺や童話みたいなやつには小さな可愛い生き物がつきものっていう勝手なイメージもありますし、挿絵もっとほしかったな。

(ただ、本作の紙の魔物たちって、素直な可愛いヴィジュアルしてないけどね。個人的にいちばん分かりやすく言うなら、鬼灯の冷徹の白澤様のアレ系……)

 

 あとはリィリの成長も良かったですね。

 感情を失った彼女だけど、本を読んだり、色々お話ししたりすることで相手がどんな気持ちになっているのか、自分がどう感じているかを理解しようとしている姿がすごく良いです。

 感じられない、けど理解しようとする。そうすることで無表情の中にあるだろう小さな感情が見えてくるとすごい可愛いのですよ。特に今回は実は高所恐怖症だったらしいっていう事実が判明したりして、あのシーンは最高に可愛かったわ。

 

 

3巻 「青空はるかな最果て図書館」感想

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 最終巻の舞台は、天空の円形劇場。

 地上の図書館、海の博物館と続いて、今度は空の劇場ですね。こういうのは字面だけでもワクワクしてしまうのが人の本能でしょうか? ファンタジーの醍醐味というのがいいのかな?

 

 ともあれ、そんな幻想的な雰囲気がありそうな場所のお話だけど、内容はすごくシリアス。

 長期休暇(大量の課題付き)なルチアが図書館に居候を始めて、しかしルチアの師匠であり元図書館館長のテオドラからルチアの命が狙われているから保護して欲しいとお願いされる。事件を調べる中で明らかになるのは、ルチアの出自、それが天空の世界に暮らす者たちに繋がるようで……、というお話。

 

 



 まず今回の設定の部分について。

 天空の世界には、地上の世界の過去から未来を含めてあらゆる事象を記録する本があって、それこそが地上の運命を定めて、劇場ではそんな地上の出来事が演じられている。みたいな感じらしいです。その本の名前こそがパライナで、本作の世界全体の名前にもなっていると。

 運命とか、地上の出来事を定める書とか、世界観がめちゃめちゃ大きくなってきたなって思うわけですけど。

 

 ストーリーに関しては世界の危機に立ち向かった1巻、図書館を守る2巻から、ルチアを助ける3巻と、どんどん身近な小さなものになってきているんですよね。この対比が良いなって思う。どれだけ世界が広がっても、大切にすべきは近くにいる大切な人、みたいな感じが伝わってきて。

 それに、この作品はやっぱり物語が主題なのだから。

 奪われたお姫様を救い出す、みたいな話がシリーズの締めになるのって最高にハマってると思うんですよね。

 最後の戦いはウォレスや、ルチアの師匠テオドラの活躍はもちろんですけど。個人的にはやっぱりルチアの親友のあの子のがんばりがいちばん好きでした。1巻からずっと色々な場所で活躍してましたけど、最終巻でもしっかりやってくれました。

 

 あとは序盤からピリピリした空気があって、終盤は当然シリアスだったので。

 ルチアとリィリが仲良くなったりする日常のささやかな描写の癒やしパワーが大きかったですね。3巻はもう表紙からしてルチアが、リィリの隣に座っていっぱいお話ししようとしてる感じがあって可愛い。

 

 

 

巻別満足度と総合評価

 最後に本作の巻別満足度と総合評価です。

 

 まずは巻別満足度。

 終始、本作の持つ優しさと、胸がはずむファンタジー世界観に魅了された作品でしたね。1巻を読んで気に入れば、2巻3巻も継続して楽しめるような作品だったと思います。

 

 総合評価、シリーズ全体を通しての満足度は ★9/10

 すごく良かったです!

 

 

おわりに

 発売当時から読みたかったのだけど、現実的なお金の問題があって諦めていた作品……、ずっと読みてぇなと思っていたのがようやく読めましたね。

 そして、やっぱり発売当時読んでおけば良かったぁ! って思ってしまいました。

 2020年くらいの作品だとこういう気持ちになる作品が結構あるかもしれませんね……、わたしが色々新作を自分でチェックして買ってラノベ読むようになったのが5年前くらいからなので。

 

 とりあえず、読めて良かったということで、感想を終わりにしよう。

 

 最後に1巻のAmazonリンクとBOOKWALKERリンクを貼っておくので、気になったらチェックしてみてください。

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前回のシリーズまとめ感想「花守の竜の叙情詩」

【シリーズまとめ感想part53】花守の竜の叙情詩 - ぎんちゅうのラノベ記録

 

次回のシリーズまとめ感想「まぶらほ

【シリーズまとめ感想part55】まぶらほ - ぎんちゅうのラノベ記録