ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part112】組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い

 今回の感想は2023年10月の電撃文庫新作「組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い」です。

組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 昨日の敵は、今日の妻。夫婦として生きる異能力者達の甘々ホームコメディ!

「……大っ嫌い!」
「奇遇だな。おれもだ」

 かつて敵対する異能力者の組織に属し、反目し合う目的のために抗争を繰り広げていた二人。

 《羽根狩り》の異名を持つ犀川狼士(さいがわろうし)と、《白魔》と呼ばれる最強の異能力者・柳良律花(なぎらりつか)。

 血で血を洗う毎日を過ごし、まともな社会経験のない二人だったが……

「ろうくん、大好きっ」
「俺もだよ、律花」

 組織解散後はなぜかイチャコラ付き合った上に結婚していた!

 憎さ余って可愛さ100倍? いまや、毎朝会社に行く際に玄関で「いってらっしゃい」のチューをするくらいバカップルを地で行く夫婦。

 だが夫にはただひとつだけ悩みがあった。

 それは、妻と一度も寝床を共にしたことがないということ……要するに彼は既婚者なのにいまだ童貞であったのだ!

 これはそんな夫が数々のトラブルに巻き込まれながらも、

 身持ちのお堅い妻との愛を深めるため、今日も必死にアプローチを続ける艱難辛苦の物語である。

 

感想

 結局、馴れ初めはどこ!?

 読み終わって最初に言いたくなったのがここでした。

 

 やはり本作のキーとなるタイトル部分、宿敵だった相手と今ではおしどり夫婦になって幸せな日々を送っている。何がきっかけで二人が恋愛を意識するようになったか、これはやはり気になってしかるべきでしょう。

 

 とはいえ、読めば分かるものですが。

 この作品の内容としてはそこが主題ではないので。

 その馴れ初めに向かったら1巻としては話が脇道に逸れるのかなと思うので、今後への期待として残しておくべきだと納得しておきます。

 それに異能力なんて非日常にあって、日常に戻ってから二人が結ばれるまでの過程となると本当に「特筆することのない普通の恋」となっていたかもしれないので、それならそうでそこは読者の想像で補完するのでも十分な気持ちもありますしね。

 

 そんなわけで、読む前から馴れ初め部分が気になっていたのでそこが明記されてなく少しモヤッた作品ですが。

 

 その点を除けばちゃんと面白かったです!

 

 まず本作の方向性としては。

 夫婦になって毎日イチャイチャチュッチュな二人だけど、まだキス以上には踏み込めない状態で結婚一年の記念日を間近にしていたというもの。

 なので、そんな来るべき記念日に向けて少しづつ意識を変えようとする夫婦の日常を描くような作品でした。

(つまり基本的には未来志向の作品なので、さっきも言った過去話は脇道に逸れちゃうんですよね)

 

 まず、この日常の夫婦円満な様子が最高でした!

 恋人になる前のドギマギや、恋人になってからのソワソワとは違う。

 ちゃんと落ち着いた雰囲気で、言葉の節々や二人のそれぞれの視点の地の文から相手への惜しみない愛情をビシビシと感じるような雰囲気。

 ときには嫉妬や衝突もあるけど、これからの人生を共にする相手として食や趣味といった生活にあるモノに対する価値観や考え方を尊重し合って理解して行こうとする向き合い方。

 まさに新婚夫婦のイチャイチャです。

 見てるだけでイイネって言いたくなる。

 

 でもって、そんな夫婦の日常に根ざしているのが10年前という学生真っ只中の時期にお互い異能力者の社会なんていう、普通ではないものに所属していたということ。

 一般人になった今、本当に普通にできているのかなんてことをお互いに確認し合ったり、あるいは家の中を漁ったら昔使ってた武器が出てきて懐かしんだり、そんな過去を思わせながらの今があるという空気感を随所で感じるのが良かったですね。

 そして非日常に関わったものが素直に日常に戻れるわけがない、と言うように。本作もまたかつての戦いが常に背後に忍び寄るような形になっていましたが、過去は過去、今は今だとしっかり夫婦で答えを出して立ち向かう展開も素直に胸が熱くなりました。

 何より、自分の妻が危険な目にあっていると聞いてすぐに駆け出すことができる旦那さんというのがやっぱりカッコいいモノですし。

 本当はめちゃめちゃ強いはずのお嫁さんがピンチになってしまう理由、彼女が日常で絶対に魔法を使わないみたいな部分も彼女の強い愛を感じて良かった部分。

 

 ちなみに個人的にいちばん好きだったのが、包丁が折れてどうしようってなったときに昔使ってた日本刀で料理をしだすお嫁さんというシーン。

 まず普通にコメディ的に笑えますし、その上で非日常が過去になって、けどそれもやっぱり今の日常に残っているって感じがするの最高なんですよ。

 

 あと、キス以上のえっちなことに踏み込めない理由の一つだったアレに関しては「あー、やっぱりそういう系か(笑)」と思うと同時に、律花ちゃんのえっちなイラストくれ! ってめちゃ思った部分でした。




 また、そんな過去ありきの空気感と、今のイチャイチャが魅力的な本作ですが、楽しく読めるコメディとしても非常に満足。

 主人公にだけ何故か声が聞こえるペットの猫とか、律花の国語力がちょっとアレな部分とか、夫婦や家族の中だけでもクスリと笑えるところはいくつもありますが。

 

 やはりいちばんは、ヒロイン律花のお兄ちゃん!!

 

 これが金髪糸目関西弁のシスコンという「あ、これは良いキャラ(笑)」っていうのをそのまま体現したような感じ。

 

 夫婦の家にやって来てご飯食べて

兄「いやぁ、やっぱり妹の料理は最高やな〜」

妹「あ、それ作ったの彼だよ」

兄「クッソマズ!」

 みたいな会話をするようなタイプ。

 

 妹全肯定、妹にまとわりつく虫は絶対殺すマン(それでもちゃんと妹の幸せを願っているから、なんだかんだで主人公のことを認めている)みたいな感じなので、まぁ見てて本当に楽しいですよね。

 なので個人的にはこのシスコンお兄ちゃんをもう少し色々動かしてほしいなって思ってます。

 ウザ絡みしまくって、妹に本当にウザがられて、しょぼーんってなって、主人公に八つ当たりするみたいなのやってほしい。




 そういう感じで、まとめますと。

 読む前から気になっていたポイントはあって、そこが描かれなかったことが個人的なしょんぼりポイントではありましたが。

 それを踏まえても、この作品の強く見せたい夫婦の在り方や日常イチャイチャの方向性が明確で、しっかり1冊でその軸を基にストーリーを展開していったことで非常に満足度の高い作品!

 そして何より結局、ヒロインが可愛いは正義なんすわ。夫婦でイチャイチャ、嫌いな人いないでしょ? そういうこと!

 

総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★★☆ (9/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 非日常から日常に戻った夫婦のイチャイチャ具合が最高! 続きがあるならなれそめ話を是非見せてください!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp

 

余談・追記

 最後に余談です。

 

 本作はかの伝説の作品「賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求」の作者である有象先生の新作ということもあってものすごく楽しみにしていた作品。

 まだ「ぼくたちの青春は覇権を取れない。」と「君が、仲間を殺した数」の二作品は読んでなく、前作の「サキュバスニート」は読んだわたし個人として少し思ったことが。

 

 シンプルにこの作者は作品を書くのがめちゃくちゃ上手だなということ。

 どこにそれを感じるかを考えた時、個人的に1つ挙げたいのはやはり軸が通っていること。

 作品の雰囲気。物語の方向性。そういったものをしっかり定めた上で、コメディをするときはコメディ、シリアスのときはシリアスという切り替えが非常にはっきりしている。それは当然ながらキャラにも通じてきていて、ふざけるときは全力でふざけて、イチャイチャするときは全力でイチャイチャする。

 そこにもう1つ挙げるなら、伏線回収や起承転結といった1冊を通した完成度が非常に高いこともあるように思いました。緩急がはっきりして切れ味の鋭いコメディやシリアス、ギャグ、どんなパートにおいても伏線を張るべき場所でしっかりと張っておき、終盤でそれらを余すことなく回収してくる。これによって最後に一本しっかり物語が締められるのです。

 ですので、総合的に見て読んでいて非常に心地良く感じられるんですよね。

 もちろんこういった物語の緩急やら、あらゆるパートを面白く見せるためには作者の持つ知識やネタの引き出しの多さというのももちろんあるかと思います。そもそもの話ですが、既に5作品書いていてそれぞれジャンルが異なる作品を生み出せるという時点で作者の力量の高さが分かるというものですよ。

 

 なので、やはり一言でまとめたら、作者がすごい。これに尽きるのだと思います。

 今回の感想、最初に少しだけ不満は言いましたが本当に満足しているんですよ。面白かったんです。

 そして感想の中に今話したような内容を上手く入れることができずに今回は追記という形でかかせていただきました。