ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part115】忍ばないとヤバい!

 今回の感想は2023年10月のMF文庫J新作「忍ばないとヤバい!」です。

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あらすじ(BWより引用

 忍者は今も日本に存在する。そして、日本の治安を陰から守っているのだ──

 そんな忍者を目指している16歳の少年、影山忍は最終試験の真っ最中。試験内容は正体を隠して普通の高校を卒業することだった。

最初の一年、クラスで誰よりも目立つことなく過ごせた忍。このままあと二年過ごせば無事合格するはずだったが──やたらと忍に絡んでくる金髪ギャル転校生・白石雪の正体は実は忍者だった! 

 しかも抜け忍である彼女は忍の家に転がり込んできて!?

 「今日からこの家に泊めてくれない?」って、それはマズいだろ!

 果たして忍は無事高校を卒業できるのか!? 新感覚現代学園忍者ラブコメ、開幕!

 

感想

 いやぁー、これは想像以上来ましたよ!!!

 

 これぞMF文庫Jの真骨頂と言わんばかりの軽快なラブコメを見せつけてくれました!!

 

 最初に言います、今回は大満足です!!

 

 

 では、改めて本作の感想に移るのですが。

 

 まずは作品の概要をざっくりと説明。

半蔵門、という忍者の一門で育った主人公・影山忍。

 最終試験として、正体を隠したまま高校生活を送っていたある日、クラスに転校生の白石雪がやってくる。

 どういうわけか忍にも積極的に関わってくる彼女は、忍の家にまで押しかけてくる。

 彼女の正体は半蔵門と対立する羅生門からの抜け忍であり、行くあてもない彼女は忍術を使って一般人を洗脳して宿にしようとしていたらしい。もちろん、同じ忍者である忍には忍術が効かず、忍の師匠による判断で、雪は保護観察処分として忍の家で共に暮らすことになる。

 こうして、雪と出会った忍の騒がしい日々が始まることになるのだった。」

 と、こんな感じでしょうか。

 

 この作品のメインはラブコメ

 特に忍者たちによるちょっぴり騒がしくも楽しい日常コメディという要素が強く、更にはそんな日常を通じて主人公の忍が少しずつ変わっていき最後には派手なバトルを見せてくれる、そんな作品ですね。

 

 では、ここからようやく本作の感想。

 

 まずね、もうこの作品は冒頭から掴みが抜群です!

 忍が忍者になるべく修行しているときの様子を、師匠との会話のダイジェストで見せてくれるのですが。

 ここで分かるのが、そもそもに忍は何が何でも忍者になりたい理由があるわけではないということ。でも忍者の素質は素晴らしいものだから、師匠は何とかやる気を出して欲しいと思って「忍者はモテる」「ハーレムだって作れる」なんてバカバカしい説得をしようとするんですね。そして、大概アホな忍はそれで「じゃあもう少し修行がんばるかなぁ」となってしまう。

 たった数ページの会話文だけで、主人公がこういう人間だというのを見事に見せている。これだけで、わたしはもう読む手がワクワクしていました。

 

 プロローグが終われば即座にヒロインである雪が転校してくるシーンへ。

 先生から頼りになる人だからと言われていたらしく、忍に気さくに話しかけてきて・・・わたしが概要に述べたような展開になっていくわけですね。

 そしてこの雪というヒロイン、彼女の天真爛漫かつ誰とでも友好的にできる性格によって一気に楽しい日常パートを広がっていき。さらには、それまで忍が関わりを持ってなかった同じ門家の忍者である茜(思い込みが激しい)や葵(冷静に場を乱していく)との交流も始まると、個性豊かなキャラたちの会話劇というコメディの華やかさがより一層に増すのです。

 

 ここで、重要なのは「コメディの主導がヒロインである」ということ。

 雪と出会うまでは、自分のやりたいことすらない忍にこんな日常はなかったんです。

 それはこの小説としてもほんのわずかモノローグで流す程度しかないわけで。

 しかしこうして物語が始まったら文字通りに、主人公のそれまでの日々が一転した。

 だからこそ、そんな状況に少し戸惑って、でも心地よさを感じて。そんな気持ちを本人が正しく自覚しているかどうは別として。終盤には雪を守るために戦おうとする覚悟への流れが実に自然でスッと入ってくる。

 

 作品としてはただ軽快なコメディを書いているだけなのに、そういうキャラの性格やバックボーンを踏まえた上のささやかな変化っていうのがちゃんとと分かる、これがものすごく良いんですよ。

 

 そうなってきたら、あとはもう終盤はカッコいいところを見せるだけです。

 雪が抜け忍だと分かっている以上は、彼女を狙った刺客が必ずやってくる。

 それまで自分から何かをしようだなんて思ってなかった主人公が始めて見せる、彼女を守ろうとする意思。それまで目的意識もなく、しかし師匠が認めるほどの才能を持っている主人公の最強を派手で痛快に見せてやるわけだ!

 いいじゃないですか、王道で素晴らしいじゃないですか!

 日常をしっかり味合わせてから、こういう山場もってきたら、ね! いいですよね!

 個人的にはこんなカッコいい見せ場だけど、ちゃんとオチではコメディらしいのを持ってきたところも良かったなと思ってます。

 

 

 また細かいところに注目すると。

 基本的には日常コメディが売りの作品ですが。

 冒頭から普通に忍術で洗脳とかいう犯罪行為をしようとしている雪や、思い込みの激しい茜の初登場のドンパチなど、ちゃんとそこに忍者ならではの忍術ありきな日常風景があったり。

 ヒロインたちがそれぞれ忍者らしく秘密を持ちながら忍との日々を送っているみたいな、細かい部分や小さい伏線も上手く回収してるのが、作品として細部までしっかり作り込まれていると感じて良かったです。

 さらには忍者×バニーガールなバニンジャーなんてものをヒロインはしっかり可愛く、細マッチョな主人公は明らかに異質でやべー奴として口絵イラストから魅せてくれる猫屋敷ぷしお先生の挿絵の数々にも楽しませてもらいました。

 

 

 しかしながら、一点。

 個人的に言及しておくべきこととして。

 この作品は忍と雪の最初の会話から、ジョジョの話題を出してきます。

 ジョジョは学生の義務教育、と言うくらいにジョジョ推しするヒロインでした。

 なので知らない人から見たら、最初の会話のこれでやや印象を悪くしてしまう可能性があるかもしれないなと。

 個人的にはジョジョ大好きなので非常に楽しく読んでいましたが、一作品として最初の主人公とヒロインの会話を盛り上げるのが他作品の話題というのはこれいかがなものかと……。

 

 

 さて、今回は感想が長くなりましたが。

 これはもう、こういうのが読みたかったと素直に言える軽快なラブコメ+忍者というちょっぴりファンタジーな作品でわたし大満足です!!!

 ラブコメとしてのラブの気配はまだ薄いものの、この1巻を通じた一通りの事件を通じて雪の中で忍に対する意識変化が少なからずあるでしょうから、これがどんな風にラブコメになっていくのか。これがとても気になるので是非とも続巻を読ませて欲しいですね!

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★☆ (9/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★☆(9/10) 最高に軽快で楽しい忍者ラブコメでした!!!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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