ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part202】みみみみ -神手洗澪には未来が視える-

 今回の感想は2024年9月のMF文庫J新作「みみみみ -神手洗澪には未来が視える-」です。

みみみみ -神手洗澪には未来が視える-【電子特典付き】 (MF文庫J)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 『最後の戦い』は終わった。人類は滅亡を回避した。 ここから始まるのは、元・救世主とのありふれた恋物語

 突如地球に現れた【外敵】との戦い【IW禍】は、人類の勝利に終わった。世界に平和が戻ってきた。復興が進められる中で俺・桃澤基雄は、とある人物の側近に選ばれる。未来を予知する『未来視』能力で、人類を勝利に導いた『元』救世主。神手洗澪の側近に。しかも彼女は初対面で、「わたしたち、将来結婚するようですよ?」なんて言い出して……!? 
 始まった彼女との日常。学校では正体を隠しつつ恋人同士として、放課後はお隣さんとして共同生活を送る日々。騒がしくも楽しいそんな毎日の中で、俺は一人の女の子としての澪を知っていく――。これは『平和になった世界』で始まる、元救世主とのありふれた恋物語

 

感想

 MF文庫Jといえば?

 そんな質問の答えは多々あることでしょうが、その中の1つに間違いなくあるもの。

 

 それは4文字タイトル!!

 

 まよチキ、えむえむ、つきツキ・・・わたしが読んでいる作品でもパッと何作か出てくるくらいには一時期は多く存在していた4文字タイトル。しかしながら昨今略称では4文字くらいの作品はあれど、タイトルそのものが4文字な作品はなかなか見かけない。

 

 と、そこで来ましたよ本作「みみみみ」!!

 神手洗澪(みてらい みお)には未来が視える、で略してみみみみということでしょう。

 すなわちこれは「迷える執事とチキンな俺と→まよチキ」系譜のタイトルと言えるわけですね!

 はい、もうこの時点で100点!MF文庫J適正100点をあげましょう! 



 

 と、発売前から非常に楽しみにしていたわけですが、そんな前置きは脇にポイしまして改めて感想といきましょう。

 

 本作は、人類が突如地球に現れた外敵と戦い、勝利した後の日常を描くお話です。

 主人公となる桃澤基雄くんは戦時中に後方支援として物資の管理などをしていて、ヒロインの神手洗澪はその未来視の力で人類を勝利に導いた救世主。

 戦いが終わって澪が新しい日常を過ごすに当たって、同年代で家事や一般常識の面で手助けできる主人公がその補佐役として選ばれたところから物語がスタートします。



 まず率直に、面白かったと思います。

 というのも、この作品は描きたい内容が明瞭で、それを中心に話を広げていたからです。

 

 そしてその描きたい内容というのは「澪が普通の幸せを得る」そんなお話。

 未来視の力で救世主と言われるほどの活躍をした少女であっても、その心は普通の年相応の女の子でしかない。しかしながら、世界中が危機に陥って自分にできることがあるならと必死に救世主然と振る舞い続けた……、言ってしまえば分厚い笑顔の仮面を作っているような女の子。

 そんな子を幸せにするお話を描きたい、と読者からしても非常に共感しやすいテーマなのが素直に良いですし。こういう異能力を持ったが故のヒロイン像というのは、異種族異種間大好きな一個人としても非常にメシウマで良いですよね。

 

 テーマがありふれた日常の幸せ、となれば本作で描かれるのも自然と主人公とヒロインの新しい日常になるわけです。

 主人公視点ではいきなり同い年の女の子の隣室で暮らすことになって、彼女の手助けをしてやってくれと言われるようなドキドキの展開。さらにヒロインの未来視で、将来自分達が結婚する、なんて言われて彼女も将来の妻を自称して接してくる距離感に悶絶必至。なんともラブコメとしての旨味がしっかり感じられる導入でグッド。

 そこから普通の学校生活が始まるわけだけど、落ち着いて日常を過ごしてみるとやはり目に付くのは澪が持つ未来視という非日常。しかし彼女からしてみれば未来視があることが当たり前で日常なわけだから、それを上手く便利に活用しているだけの気持ちでしかないわけで。

 この普通の人と特別な力を持った人の感覚の違いを日常の中でしっかり描きつつ、その中で理解を深め合いながらも、やっぱり完全に相手の感覚を知ることができないからこそのすれ違いも起きてしまって……、というラブコメにおける関係性の進展の山谷をしっかり演出している作品全体の空気感がとても素晴らしかった。

 そして最初にも言ったように、澪の方は基本的に笑顔が明るく友好的な性格ではありますけど、その笑顔にはやはり一枚壁を感じさせる部分があり。主人公側がそんなヒロインの心にしっかり踏み込んでいくという方向性がハッキリしているのもあって、主人公の基雄くんが澪の異能力を踏まえた彼女自身に向き合ってちゃんと自分の言葉で彼女に接していく姿は非常に好感が持てるのも良かったですよね。そしてこういうので徐々に恋が生まれていくヒロインというのは、やはりめちゃくちゃ可愛い。

 特にこの作品は最後のあのシーン、ものすごく些細な変化ですけども。澪が作中でそれまで見せることのなかった感情がはっきり見て取れるシーンを、未来視を絡めつつ、イラストでも魅せつつ、最後のシメとして描いていたので1冊の読後感としても抜群に良かったです。



 一方で、今後の展開として注目する点としては。

 世界観設定の部分でしょうか。

 既に述べたように1巻では日常にフォーカスしていたので、外敵との戦いだったり戦後の情勢だったりという部分が自然な展開の中で触れたりはするものの、あまり深掘りしているような印象はなかったのですよね。ですので、ここを今後どの程度深掘りしていくかによって作品全体のシリアス度というのは大きく変わりそうですよね。

 どっちが良い悪いという話ではなく、素直な今後の期待として。このまま日常重視で夫婦になる二人のラブコメ100%でも、もちろん良いですし。セカイ系作品よろしく、序盤は日常な空気だったものが段々シリアスになって、その中で二人の関係性を深めるでも良いですし。

 本作は未来視によって結婚のゴール(ハッピーエンド)を確約しているからこそ、その過程を最大限楽しむことに集中できるようになっているので、そこの味付けが如何様にもできるのは続巻を待つ読者としてとてもワクワクできるようになってて、上手くできてるな感じました。

 

 

 と、そんな感じですので。

 まとめると、全体を通して明確なテーマと方向性がはっきりした作品で読者も素直にそれを楽しむことができて満足感の高い作品、というのがわたしの感想になりますね。

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻への期待・・・★★★★☆ (9/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) こういうヒロインを幸せにしたいのすごい良く分かる!

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp