ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part121】少女事案

 今回の感想は2023年11月のガガガ文庫新作「少女事案」です。

少女事案~炎上して敏感になる京野月子と死の未来を猫として回避する雪見文香~ (ガガガ文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 俺はこの夏、小学生を猫として飼う。

 どこにでもいる男子高校生・夏目幸路は、この夏休み、小学五年生の女の子を「猫として」飼っている。

 ーーなぜ?

 それは、当の小学五年生女子(※ネコミミコスプレ中)である雪見文香が〈未来のニュースを視る〉能力を発現していて……その予知によれば、俺の家で「飼い猫」としてふるまわないと、夏休みの終わりに連続殺人犯に殺されてしまうからだ。

 トラウマサヴァン、過去の痛みと引き換えに能力を得てしまった少女たち。雪見の能力は本物で、だから俺は小学生女子をペットとしてちゃんとかわいがる。
もちろん、ずっとそうもしてられない。

 雪見の死の運命を打ち破り、俺が警察に通報されて社会的に死んじゃいそうなこの状態から脱出するためには、かつて「能力」を発現させ、連続殺人犯から逃れたツンチョロ発情火炎美少女・京野月子とともに、巷を騒がせる『真夏の小学生チョコレート連続殺人事件』を解決するしかない。

 だが、調査を続ける俺たちの前には次々とややこしい事件が飛び込んできてーー猫の目のように変わる状況の中で、俺たちが生き残れるルートはあるのか? 夏の終わりに待つ死を回避するために猫になった予知能力少女と駆ける、サマー×ラブ×サスペンス。

 

感想

 うん、面白かったです!

 

 あらすじは既に述べた通りとして、もっと簡単に紹介するなら、本作は異能を持ってしまったメンヘラな女の子たちを救うサスペンスモノといったところでしょうか。それぞれの要素がしっかり噛み合っていて、作品としての方向性が明瞭で軽快に読んでいける面白さがありましたね!

 

 まず、本作のストーリーの中心となる事件について。

 もちろんその真相部分については、お話ししませんが。

 基本的にこのストーリーラインがあることで、話のメリハリがはっきり分かるようになっていたように思います。

 シリアスな部分や核心に迫る部分はしっかりと緊迫感があって、そうでない捜査段階の日常ではしっかりヒロインたちの可愛さを見せて、犯人のミスリードなどを含む小さな起承転結もあることで1冊の中での起伏をしっかり感じられる。

 最終的な犯人のホワイダニットハウダニットといった部分にはやや描写が足りないように感じるものもありましたが、この事件はメインの要素ではなくあくまでストーリーラインを整える役割として見ると十分に満足できるモノでした。

 

 

 

 では、本作のメイン要素は何なのか?

 あくまで個人的な意見ですが、この作品のいちばんの見所はやはり主人公が持つヒロインを救いたいという気持ちと、過去のトラウマをきっかけに異能を持つに至ってしまった少女たち、この関係性になるでしょう。

 

 特に主人公の持つ願いの根底にあるのが、過去の誘拐殺人事件に巻き込まれてしまった幼馴染ヒロインの月子。

 そのトラウマ故に主人公に依存気味になっていて、かなり情緒不安定なメンヘラ味のある子でして。さらにはそのトラウマをきっかけに目覚めてしまった異能である発火能力を使うと発情してしまうものだから、主人公に慰めてもらう習慣が続いているが、本人はこんな能力の副作用のせいで彼と結ばれるのは嫌だと絶対に一線は越えないという強い意志も見られ、中々にいじらしく個人的な好みのヒロインでした。

 やはり依存気味なメンヘラ属性も、能力の副作用とそれ故の葛藤があることも、過去の事件に巻き込まれたトラウマがあるからという背景が1つあるだけでそこに納得感があるように思います。

 キャラの魅力というのはこういうのが大事だと思うのです。

 

 そしてそんな彼女の自分自身ではどうしようもない苦しみを常に側で見続けていたからこそ、主人公が持つ「事件の犯人を捕まえたい」「過去におびえず異能になんか頼らずとも知恵と勇気でどんな障害だって乗り越えられると証明してやる」という意思にも納得ができるし、好感が持てる。

 本作の主人公は、幼い頃から正義感に溢れるような少年ではあったようですが、そういう思いがずっと変わらず持ち続けるにはやはりそれ相応の理由が必要ですからね。そこをヒロインとの関係性で補強しているのが良いんですよ。

 それに何よりも、ヒロインのために、という一心で戦うというのはカッコいいじゃないですか! 熱い展開じゃないですか!

 

 もちろんそんなヒロインの魅力は月子だけに限らず、表紙にもなっている小学生ヒロインである雪見ちゃんにもありました。

 ある意味で能力に縛られ、小学生らしい真っ直ぐすぎる願いを持っていて、だからこそ心が摩耗してしまって、けれどそんな彼女に真っ直ぐ向き合ってくれた主人公がいたら小学生だって好きになってしまうでしょう。

 と、そんな彼女の気持ちの変化がしっかり分かる展開が良かったです。

 

 また、この巻ではあまりフォーカスされていませんでしたが。

 既に主人公の助けがあって異能から救われたというヒロインもいるので、この子も今後フォーカスがあるのでしょうか? 気になる部分ですよね。



 

 と、ここまでは基本的に絶賛なのですが。

 すこーしだけ気にかかる部分があったりもして。

 それが猫として飼う意味とか、能力の反動が発情であるとか、そういった細かい部分で。すごい雑に言ってしまうと、猫耳つけたヒロインって可愛いよねとか、ヒロインとえっちぃことをしたいとか、そういう理由で入れられたようなものに感じてしまったのです。

 いや、まぁ、実際問題猫耳つけた女の子は可愛いし(特に小学生で猫耳でいかがわしい格好とか見たらペロペロしたくなるよね)、可愛い幼馴染ヒロインとえっちぃことできるの最高とは思うから問題はないんですけど。

 ただ、本作に限って言えば、変にえっちぃ攻めた展開に持って行かずとも設定のみで十分すぎるほどのキャラ関係や恋愛的展開の満足度があるから、えちえちを過剰にし過ぎると冷めてしまうだろうなという懸念があるのです。

 月子の能力の副作用で発情してしまうという設定も、あくまで主人公との関係性に対するアクセントとして活かして、具体的なえち描写は必要ないと思うわけです。(まぁ、同作者の二番目彼女という、キャラへの愛着一切沸かない状態で延々と虚無のようなえち描写を見せられる虚無と比較したら、この作品は圧倒的にヒロインを好きになれるのでえちシーンでちゃんと興奮できるから良いですけど)

 常々言いますが、えっちぃの読みたいなら、最初からそういう専門のレーベルとか漫画を読めば十分なんですって。

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★ (6/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 全体的に満足感があって楽しめる作品! ・・・というかなんだかんだ言ったけど結局、わたしは異能があったりしてそれ故の感情のアレコレがある作品が好きなんですよ。

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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