ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想prt124】多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉

 今回の感想は2023年11月のMF文庫J新作「多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉」です。

多元宇宙的青春の破れ、唯一の君がいる扉 (MF文庫J)

※画像はAmazonリンク

 

 ※今回は感想をネタバレアリの部分を分けて書いています。

 ネタバレ気になる方は自衛お願いします。

 

あらすじ(BWより引用

 並行世界を渡って、理想の青春を。

 普通の高校生・湯上秀渡は事故をきっかけに『並行世界を行き来する力』を手に入れ、それ以来"理想的な青春"が存在する並行世界を数多く渡り歩いていた。憧れの幼なじみ・友永朝美との交際、ミステリアスな先輩との生徒会、思春期な義妹との生活など──面白い世界を見つけて好きに選べるなんて最高!……しかし、突然『全ての並行世界が1つに統合される』現象が起き世界が急変。各世界のヒロイン達全員が同じ世界に現れてしまう!

 さらに、友永朝美に乗り移った"未知の並行世界の朝美"から「世界の統合は秀渡君が修復できる」といきなり告げられ……? 

 新世代がエモーショナルに描く、カオスSF青春劇開幕。

 

感想

 とある事故をきっかけに無数の並行世界を渡り歩くことができるようになった主人公。

 無数の選択肢を自分だけが選べる自由を謳歌していると、ある日全ての並行世界が1つに混ざり合ってしまう。混線してしまったヒロインたちとの関係性に翻弄されながら、彼は科学技術の発展した並行世界の幼馴染から世界の異変、その理由を聞かされて――、とそんな感じで広がっていくお話でした。

 

 この先は自分の目で確かめよう!

 ということで、内容に触れるのはこのくらいにします。

 

 この作品はとにもかくにも「どこに向かっていくんだ?」という気持ちが湧き上がってくる作品でした。

 話の目的が分からないのですよ。

 そのためそういう頭の中に?マークをずーっと抱えたまま、地に足が付いた感覚も無く話が進んでいきます。

 そういう作品が苦手な方は読み進めるのが大変かもしれません。わたしも半分くらいは、そういう気持ちがありました💦

 ただ、もう半分の気持ちとしてはポジティブにこの話がどんな結末を持ってくるのかを見たいという気持ちで読んでいました。

 

 そして、最終的な感想としては。

 

 なかなか面白い作品だったな、です。

 設定や世界観はもちろん最初から面白い個性的な要素が多かったのですが。

 わたしとしては、読み終わってみるとこれはちゃんと1つの青春だったなと思えるまとめ方が気に入りました。

 並行世界の設定とか、色々なヒロインとの関係とか、そういう全部が主人公自身が自分の心に向き合うというそれだけのための壮大な前振りだった、と言えばいいでしょうか。

 この本当はすごい小さな話なのに、こんなに壮大な脚色ができるのか、という読後感が良かったと思います。

 

 おそらく単巻完結ですので。

 あらすじ見て、気になったら一度読んでみることをオススメしたい作品でした!



感想(ネタバレアリ)

 さて、ここからはネタバレも含む(かもしれない)感想といきましょう。

 

 個人的な感想として、既に言ったように「これはあくまで主人公の成長の物語だった」という着地点が良かったと思うんですよね。

 というのも、これまた既に言いましたが序盤はずーっと地に足ついてない物語という感覚が拭えなかったんですよ。

 まるで自分の生きている世界を選択肢つきギャルゲーのように何度も何度もやり直しまくってる主人公。それはさぞ面白いものだと思いますが、そんな自分の思い通りにいかないのを何でもかんでも否定するようなやつが主人公ってこいつ何を考えてるんだ? っていうのが気になったわけですよ。

 

 だから、そこにちゃんと答えを出す。

 無数の自分の可能性を見た主人公自身が自分の気持ちに折り合いをつける。

 そういう着地点に来てくれたことで、まず素直に序盤の疑問に対しての納得感が生まれました。

 

 それにですよ。

 この作品、設定や世界観はものすごーく壮大だったのに。

 その根底を見てみれば「幼馴染の女の子がアイドルになってしまってキラキラしてるから、劣等感を抱えてしまった青年の現実逃避」でしかないんですから。

 そして、無数の並行世界の中で他の女の子と遊んだりもしてるけど、その中では何度も何度も色々な可能性の幼馴染に出会って、彼女がいつだって努力し続ける眩しさがそこにはあって、目を背けていたその眩しさに心を動かされて、背中を押されたりもして。

 最後に全部問題が終わってようやく自分が逃げ続けてきた幼馴染と、彼女に持っていた自分の気持ちに向き合うことができるようになったんだ……って。

 

 なんだそれ、しょーもないな。

 って、そんな風に言えるほど分かりやすいシンプルな話に落ちてきたんですよね。

 並行世界設定とか、他のヒロインとのラブコメとかが、全部結局幼馴染とのラブコメに収束するためのアクセントでしかなかったとか本当にアホらしい(笑)

 

 でも、作者のあとがきを見ると「SFというのはある種の現実逃避」なんだというお話をされていて、そこまで読むとこの作品の描きたかったものがスッと腑に落ちるんですよ。

 

 たしかにその通りだった。

 現実逃避なんて傍から見たら馬鹿馬鹿しいけど、それでもその本人にとってはこの瞬間が大事なものだろうから。

 そういうものこそ青春なのではないかとわたしは感じるところ。

 

 結果、ここまで読者を振り回しておいて、最終的に分かりやすい着地をしてまとまっていた。

 逆説的に言えば、アイドル幼馴染もののテンプレみたいな背景で30ページくらいで終わりそうな話から、よくもここまで壮大な話にできたなという感心。すごいなと思う気持ちがあるわけですね。

 それがわたしの良かったなと思う、本作の結論でしたね。



 とはいえ、少しだけ物語の構成的に惜しいなと思った部分もあって。

 本作は最初から訳の分からない状況で始まって。先進世界からのアクセスを受けたりして。無数の並行世界が混濁してしまう問題を解決するために奔走して。と、最初から先の読めないハラハラの展開が続いていたわけですが。

 最後は実に現実的な着地点に来るので、作品の盛り上がり的にはどうしても尻すぼみに感じてしまう部分もあったんですよね。

 話の構成的にどうしようもない部分ですが、そういう風に思う気持ちも少しはあるという話ですね。

 

 そして、そういう構成のストーリーを見て。

 なんだそれ? この作品結局何だったの?

 と思ってしまう人は苦手な作品かもしれません。

 とはいえそういうのも一度読んでみなきゃ分からないと思うので、やはり気になったら読んでみるべきですよ。

 わたしはオススメします。

 

 青春ってのは、結局バカバカしいんですから。

 バカバカしく壮大なストーリーやっておいて、結局結論それ? というこの気持ちを是非味わってほしいです。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★ (6/10)

 イラスト・・・★★★ (6/10)

 

 総合評価・・・★★★☆(7/10) 小さな青春から広がった壮大な並行世界のお話、なかなか面白かったです

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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