ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part130】君を食べさせて?私を殺していいから

 今回の感想は2024年1月のスニーカー文庫新作「君を食べさせて?私を殺していいから」です。

君を食べさせて?私を殺していいから【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(スニーカー文庫公式ウェブページより引用)

 高校生・有町要は原因不明の殺人衝動により誰にも打ち明けられない苦しみを抱え生きていた。しかしある日クラスメイトの旭日零に気づかれる。彼女も同じく、原因不明の再生能力と吸血衝動に悩んでいると打ち明けられた。まるでお伽噺の狼男と吸血鬼は互いの衝動が互いの異常で満たし合えると気づく「君を食べさせて? 私を殺していいから」彼女から互いを傷つけ合う提案をされ危うい契約を結ぶ二人。そしてその契約はやがて抜け出し難い共依存へと発展していく。こんなことしたくない。もっと、もっと壊したい。相反する想いと欲望がせめぎ合う切ないラブストーリー開幕――

 

感想(※今回は不満を吐き出すために、サラッとネタバレします)

 今月いちばんと言って良いほどに期待していた作品!!!

 

 でも、ダメです。これはダメダメですよ!!

 いちばん肝心な部分を見せないまま終わらすなんて本当に最悪です!!!

 

 読者のことを何だと思ってるんですか!!




 とりあえず、落ち着いて感想といきましょうか。

 

 

 本作はKウイルスというものによって、殺人衝動を持ち痛みを感じなくなった少年と、吸血衝動を持ち外傷で死ぬことのなくなった少女によるラブストーリー。

 

 このあらすじからもう分かる、最高のイチャイチャがありましたよ。

 この良さは疑いようがないもの、実に素晴らしかったのです。

 

 主人公はヒロインを殺して。

 けれど、自分の衝動を疎ましく思うが故、普通の人としての倫理観故、耐えきれない罪悪感を感じてしまって。だというのに、吸血鬼の彼女はそれを全て受け入れてくれる。甘い言葉で誘惑して、殺人衝動を肯定してくれる。

 こんな彼にしか分からない、彼だけの思考回路をぐるぐるしているのを見ると最高に興奮してくるじゃないですか!

 というか、これもうヒロインの零があまりにエッチすぎるんじゃないですか?

 だってそうだよね?

 抑えきれない衝動という観点で殺意と性欲は似ている、けれど結局のところ殺意は純粋な殺意でしかない。とは作中で言ってるけど、この二人だけの特別な繋がりで殺し殺されるがあって満たされ合うなら、それは普通の恋人のするキスやセックスと同じなんだわ。当人たちの気の持ちようはともかく、端から見たらめちゃめちゃイチャイチャしてるの!! 見てるだけでわたしはとても興奮するんです! ドキドキするんです!

 

 分かりますか!

 この作品って「化け物と化け物がパズルのピースのようにハマりお互いの衝動を満たし合う」というのが本質としておかれてるわけだから。

 最初から、異種族カップルがめっちゃイチャイチャしますって宣言してるようなもんなの!!!

 

 そんなん、読む前から最高だって分かるじゃん。

 だから、この作品の持つラブストーリーとしての砂糖を大量にぶち込んだような甘さは言うまでもないことなの。




 だから、わたしが文句言いたいのはここじゃない。

 

 問題となったのは本作が持つKウイルスというものの性質。

 というのも、このウイルスはキスなどの粘膜接触によって相手に移るものだというのが終盤に明かされるんです。(すっげぇサラッとネタバレしていく)

 

 はい、言いたいこと分かりますよね。

 この設定がある以上は、この二人が粘膜接触した結果を提示しないのは駄目なんですよ。

 だというのに、この作品最後にその読者全員が期待して期待して見せてくれ見せてくれって思っている疑問を提示するだけ提示して、キスしたところで終わりにしてんだよ!!

 

 ふざけてんじゃねーですよ!!

 

 いいですか。

 普通のラブストーリーであれば、キスシーンってのは綺麗な幕引きに相応しいものですが。

 

 この作品は普通のラブストーリーではねぇのですわ。

 

 だったら、その結果を見せなきゃ駄目なのはニードレストゥセイなの!

 言ったよね、二人にとっての殺し殺されるはイチャイチャなんだって。

 つまり、お互いの衝動がスワップするのか、それとも感染者同士には効果がないのか、それ次第で今後の二人のイチャイチャの方向性が変わってくるんだよ。

 スワップするなら、要が零の血を吸って、零が要を殺すことだってできるわけでしょ? 二人がそれをするかどうかは別として、そういう選択肢がある。それだけでイチャイチャの手段は増えるの!!

 スワップしないならしないで、この二人だけは感染を気にすることなくキスもセックスもできるという心持ちができるの。これは体の性質から始まって、それを満たし合うから始まった作品で、そうであるからこその二人だけの関係性が美しかった。であればこそ、そこに追従してきた恋情や愛欲すらもお互いじゃないと満たせないんだって気づけることは、よりいっそうの依存を深めるスパイスにできるんだよ!! 

 別にどっちでもいいんです、どっちだって結論「イチャイチャは加速する!」で終わるから。それに、スワップする場合でも、結局二人の間だけでウイルス回してそれを満たし合うなら、スワップしない場合の例に挙げたもの全部満たしますから。

 

 じゃあ、どっちでもいいじゃん? って思った人いるかもだけど、良くないの!

 どっちなのかを明確にしてくれないと生殺し状態だからやめてください!

 わたしとしては、粘膜接触で感染するようなものなら、そもそもが血を吸って、血を浴びてってやってる二人だったらもうこのウイルスもうとっくに混ざり合ってんじゃねぇの? もしくはもうスワップしない結論出てるんじゃない? って言いたかったりもするんだよ。

 でも、お互いに殺し合う、お互いに血をすすり合うことができるべきだろって主張したいの! さっきも言ったけど、イチャイチャの手段が増えるの!! ウイルスの突然変異でもなんでもいいけど、化け物同士が満たし合う、混ざり合う、堕ちていく、そのなれの果てだったらそれがいちばん綺麗だと思うの!!!



 はぁー、本当に最悪ですよ、新年早々に全くなんてものを読ませてくれるんですか。まったくもうまったくもう。

 普通にイチャイチャさせてるだけで最初から十分に満足できていたものに、終盤で雲行きが変わったかと思ったら、それだけはやめろよっていう結末をマジで持ってきてくれやがったんです。

 というわけで、早急に2巻を出して、キスの後の結果を提示して、その上でさらにイチャイチャさせてください!

 どうぞよろしくお願いします!

 

(あと、ここからは余談ですが。

 この作品、後輩ちゃんのキャラもかなり惜しかったんですよね。

 Kウイルスというものがあっても、先輩を好きだという気持ちを隠さず、先輩の問題をどうにかしたいと考えられる女の子という時点でかなり強いキャラだったんですけども。抑えきれない衝動である時点で、その向き合い方じゃ足りてないんですよ。

 たとえ普通の人間であったとしても、抑えきれないなら自分を傷つけてもいいから、の覚悟が必要だったように思います。

 わたしは異質をどこまでも一途に愛して、その結果自らの命がなくなってもいい。くらいの過剰な一方通行の愛も一種の異種族恋愛として大好きですからね。あれです、雪の妖精を愛して、彼女と一緒にいてもやがて自分は彼女を残して死ぬのだろう、それでもこれが僕のハッピーエンドだ、みたいな曲あるじゃないですか。具体的にはいいませんけど。ああいうの、大好きなの。寿命の差だろうが、生きる場所の差だろうが、体質の問題だろうが、大事なのは全て受け止めた上で愛しぬくこと。

 だから、この作品はその覚悟を見られなかった段階で、後輩ちゃんはあくまで主人公に普通の道を選ぶ選択肢を示すための立ち位置なんだなと納得はして読んでましたが、惜しかったなと思ったんですよ。すっごく良い子だったんですけどね。惜しかった。)

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★★☆ (9/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★☆ (9/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 素晴らしいイチャイチャを見せてくれる異種族恋愛だけど、早く2巻を出してください! それを見るまでは★8です。9とか10はあげられません!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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