ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part131】推しの敵になったので

 今回の感想は2023年12月のTOブックス新作「推しの敵になったので」です。

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あらすじ(BWより引用

 女性に発現しやすい異能力《天稟》が発現されて百年。世界は男女逆転社会の様相を呈していた。

 ところが、この世界に転生した大学生イブキは男でありながら《分離》の《天稟》を持つ。

 人智を越えるパワーの反面、隣人とのボディタッチを強制させられる《代償》を持つ不便な力だ。

 彼がこの世界で成すのは──まさかの推し活!?

 彼は正義の組織【循守の白天秤】に所属するヒナタが大好き!

 新人隊員の彼女は天真爛漫。《天稟》の《代償》でちょっぴり(!?)食いしん坊なところもとても愛らしい。

 ある時は幼馴染の兄として、またある時は悪の組織【救世の契り】の構成員として、ヒナタたち推しを最前線(・・・)で見守っていることは絶対に秘密だ。

 そんなある日、ヒナタの相棒・ルイに正体がバレそうになって……?

 推しの未来は俺が守る! 愛だけで突き進むシークレット・イルミナティ

 

感想

 これはなかなか面白かったですね~

 簡潔に言えば、

 ”主要キャラ四人の間に、しっかり関係性の網を張っているからこそ、キャラ小説としての魅力に溢れていた。”

 そういう作品です。

 

 言葉で全部説明するのも面倒なので、今回はとりあえず画像で、えい!

 見てもらうと分かりますが。
 どのキャラの間にも、ちゃんと相互矢印がある。

 そしてその関係は決して突飛なものではなく、むしろ色々な作品で見たことあるような要素ばかり。
 しかし、そうであるからこそ、これを上手く扱うことでこの四人の間でどのマッチングが起こっても会話劇、戦闘、恋の駆け引きといった味わいを引き出すことができるわけです。


 その中でいくつかピックアップして見るなら、

 

・イブキとヒナタ

 日常では近所のお兄さんと、それに憧れる少女という微笑ましいラブコメ関係があるけど。戦いとなれば、悪の組織の一員ということがバレないようにしなきゃいけないイブキと、それを追いかけるヒナタというすれ違いにハラハラできる敵対関係ができあがります。イブキの正体がバレるまで、正体がバレてから、それによるヒナタの変化というのも大きな見所です。

 

・イブキとクシナ

 日常では幼馴染同士の気のおけない距離感、可愛い弟分を見守る姉の優しさ、組織の一員としては上司と部下としての信頼関係という、どこを見ても強い繋がりを感じられましたが。

 その一方で、クシナはイブキとヒナタのことを応援しているようなムーブをしながら、イブキの異能力の代償となるスキンシップを恥じらいながらも自ら積極的に行ったりしていて。彼女がイブキを恋で見てるのか、ただの親愛で見てるのか、これが今後のヒナタとの恋の争奪戦にどう影響を与えてくるのかが非常に気になるところ。

 

・ルイ

 大好きなヒナタに近づく蝿は絶対殺すウーマン、という過剰な偏愛を感じさせる属性は単品でも強いのは言うまでもありませんが。

 害虫であるイブキを容赦なく始末しようとする徹底ぶりが見せるコメディ(?)や、敵対組織の因縁の相手としてのクシナと戦いなんかがいい味を出していましたよね。

 それに彼女がヒナタのイブキへの恋心なんて知ってしまったら最後、どんな暴走を見せるのか……、これが特に気になります。まず間違いなくイブキを殺しに行くだろうけど、大好きな親友の好きな相手という部分で理性が働くのか、あるいはヒナタに「お兄さんを傷つけるルイちゃんは嫌い!」とか言われて灰になるのか。あるいは何かの間違いでイブキに心ほだされてしまうのか。

 

 といった具合でどこもかしこも今後の関係性の進展や変化が気になるものばかり!

 

 また、本作には代償ありきの異能力設定があり、素直な異能バトルとしての面白さはもちろんですが。

 この代償によって他者とのスキンシップを強制されるイブキが自分の意思に反して推しであるヒナタに抱きついてしまうジレンマがあったり、それにより強制的なドキドキイベントを発生させヒロインの可愛い表情を引き出したり。

 加速の能力の代償として飢餓感を持つヒナタはただ可愛い大食いヒロインというだけでなく、ラブコメを加速させる強い”貪欲さ”としても見事なインパクトを出していたり。
 どちらにせよこの設定を上手く扱って、キャラの魅力、特にヒロインの可愛さを引き立てていたのが印象的でしたね。

 何よりもメインヒロインであるヒナタの可愛さに関しては目を見張るものがありました。この1冊の中でもうぐんぐん可愛さを増してました。純粋天使な女の子が、恋心を自覚してから見せる積極的なアプローチのギャップが破壊力抜群! やってることがズルいくらいに自分の気持ちを押しつけて動揺させる小悪魔ムーブなのに、根っこにあるのは純粋な好きだから可愛すぎてやっぱり天使なんよ!

 

 

 ここまでは、素直に好きな部分だけを話してきましたが。

 ここからは2つほど、気になった部分もあるのでお話しします。

 1つは世界観の部分。この1巻の段階では、まだあまり掘り下げられていなかった印象。もともとは漫画世界だったこと、それによる設定があること、くらいしか正直分かっていない。その原作漫画がそもそも未完結であることや、その漫画を知っている主人公というイレギュラーが子どもの頃から割と無自覚にヒナタにとっての憧れのお兄さんとして影響を与えてることで既に本来の物語から外れてしまっているのもあって、とにかく分からない部分が多かったです。

 もちろん、これは今後掘り下げられていく部分、物語として少しずつ明かすべき謎として残されているのは理解しますが。それを踏まえた上で、世界観として強く惹かれる部分が現状なかったなのはやや惜しかったなと。漫画世界に転生という部分でも何でも、もうひと味これは良かったと思えるものがほしかったですね。

 2つ目は、主人公の推しに対する熱量。本作はタイトルにもあるように「推し」という言葉が使われています。

 しかしながらこの推しへの熱量という部分で、ヒナタに対してのイブキの言動が普通に可愛い女の子に対するもの全般と同じなのでは? と思える部分が多々あったり、主人公の持つ「推し」というモノに対する強いこだわりをあまり感じられなかったりで、主人公単体の強み、魅力がやや欠けていたように思いました。

 既に述べたように、ヒナタとのラブコメ、幼馴染のクシナとの日常、因縁の相手ルイとの殺し合いといった他のキャラとの絡みになればそれぞれでしっかり味を出していたのですが、どうしてか単体で見たときには何だか微妙だったんですよね。

 

 

 それでは、最後にまとめますと。

 最初にも言いましたが、とにかくキャラの魅力で溢れている作品!

 それはひとえに、主要キャラ間で関係性の網を張って、それぞれの関係性だからできる展開というのを丁寧に積み上げているからでしょう。

 多々気にかかる部分はあれど、これだけで十分すぎるくらいに読者を引き込むことができると思います。

 こういう作品、わたしは好きですよ!

 楽しく読むことができました!

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★★☆ (9/10)

 イラスト・・・★★★ (6/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) キャラ小説の魅力に満ちた作品!!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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