ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part132】現代転生した元魔王は穏やかな陰キャライフを送りたい!

 今回の感想は2023年7月のダッシュエックス文庫新作「現代転生した元魔王は穏やかな陰キャライフを送りたい!」です。

現代転生した元魔王は穏やかな陰キャライフを送りたい! ~隣のクラスの美少女は俺を討伐した元勇者~ (ダッシュエックス文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

 

あらすじ(BWより引用)

 かつて、女勇者プレセアと最終決戦の後、命を落とした最凶の魔王レグナ。そんな彼が平和な現代に転生し、青天目蒼真としてわくわくの高校デビューを飾ろうとしていたその矢先……。 

 「滅びるがいいのです! 魔王レグナ!」 「恥ずかしいからその名前で呼ばないでッ!」 まさかの女勇者の生まれ変わり、超絶美少女の日月昴が現れた! 常に自分の使命を果たそうと、命を狙ってくる昴と、青春を謳歌したい蒼真の新たな戦いが始まった! ――カムバック俺の甘酸っぱい青春ライフ! 陰キャな元魔王×天然美少女な元勇者のドタバタ討伐(?)ラブ戦開幕!

 

感想

 これは良いラブコメでした!

 

 元魔王と元勇者な二人が現代に転生したら? から始まるお話。

 再会した瞬間こそ、かつての敵対関係もあって現代ラブコメらしからぬバチバチのバトルをやったりもしていたけれど――、この作品は本質的にはラブコメ

 とんでもパワーがあることによって生まれるコメディと前世を共有できる二人だからこそのつかず離れずの距離感が醸し出すじれじれ、コメもラブも十分に楽しめる作品となっていました。



 もう少し細かくアレコレ感想言っていきますと。

 

 まず、本作のコメディ部分。

 元魔王主人公、元勇者ヒロイン。二人はお互いに前世の記憶があるだけでなく、その能力まで使えるという状態となっています。そのため、最初に述べたようなバトルみたいな要素もほんの一部あったりしましたが、個人的にはこの魔法や能力というのはコメディでこそ活きていたものだと思っています。

 

 というのも、この作品のとんでもパワーって、日常の些細な部分にしか使われてないんですよ。

 例えば、「登下校に瞬間移動が使えたら?」「テスト勉強のときに暗記力を高める某青タヌキのパンみたいなものがあったら?」といった妄想を簡単に実現させたり。普通であればシリアス展開になりそうな状況でも。魔法で基本的には簡単に解決できるからささっと解決しちゃおうか、とそのくらいの軽いノリでシリアスも全回避してしまったり。

 もちろん二人とも周囲にはバレないように。おおっぴらに使うことはしないけれど、せっかく前世の力が使えるのだから””楽できるときには楽をしてもいいだろう””、””やむを得ない場合は遠慮なく使ってしまおう””、というこの心持ちがある学生生活というのを見て楽しむことができるのですよ。

 更に言えば、そういう前提があればこそ、読者は「ああ、これはそういう重い空気はナシの作品なんだな」という安心感を持って本作のメインである「ラブコメ」という部分に集中して読むことができることにも繋がってくるのです。

 またわたし個人としては。前世の力を上手く使えば周囲の人間関係とか、将来の自分の在り方とか、自分の望むこと何だって自由自在だろうに、って思うんですけど。そこまではしない、あるいは性格的にそんな器用なことはできない二人だからこそ「普通の日々を過ごすのにも苦労しちゃってる」っていう、この日常の塩梅がすごく良いなって思ったりもするんですよね。なんてか、すごい能力を持っていてもあたふたしてる感じがすっごい微笑ましいんですよ。




 そして、こんな具合で前世の力を使いながらの日常を謳歌する中でこそ、主人公とヒロインのラブの気配は生まれてきます。

 

 ここでも、やっぱり前世の関係性っていうのが上手く効いてました。

 最初こそ魔王と勇者という因縁はあったかもしれないけれど、今世にまでそんな諍いを持ち込むつもりもなければ、争い続ける必要も無い。そんな共通認識さえできてしまえば、二人にとってお互いの存在というのは、前世の記憶を共有できていちばん気楽に接することができる、あるいは何か困ったことがあったらいちばんに相談できる相手になるわけですよ。

 そうなったら自然と二人の時間は増えてくるでしょ。

 もちろん、天然ポンコツな元勇者に振り回されるから、彼女が何かやらかさないか心配だから、とそんな建前や理由はあったりするかもしれないけれど。根本的な部分では、結局のところ「前世がある」という周囲との差異を全く気にしないで何でも話し合える、っていうのは強い絆になるんだよ。自覚があるなしに関わらず。

 でもって、その自覚があるのは勇者の方だったわけで。なんでこれで気づかないんだよってくらいに、主人公へ向ける好意が溢れまくってるの。これは、まぁー、可愛いですよね。いじらしいというか、なんというか。とにかく一緒にいようとする様子が子犬っぽくてすっげぇ微笑ましい。

 主人公の方は、逆に前世の記憶があるからこそ、勇者が何かしないかを見守る保護者視点になってて全然自覚もなければ彼女の好意にも気づく様子がないみたいですが。それでも何だかんだ言いながらもいっつも彼女と一緒の時間を過ごしてるじゃん、っていうのを端から見てると十分に「お前らもう付き合っちゃえよ」と言いたくなるラブコメになっていたわけですよね。

 

 

 と、ここまでアレコレ言いましたが。

 まとめると、魔法やらのとんでもパワーがあるからこその何でもアリな状況と、それを踏まえた上で結局のところ日常には苦労しているし恋愛ごとなんて完全に初心者だから手探りしながら第二の人生っていうのを一生懸命にやっている、優しい元魔王と可愛い元勇者の日常ラブコメっていう空気感がとにかく心地の良い作品だったという感じです。

 これはかなり良作でした。

 このお似合いな二人の今後も是非見てみたいところ。



 あと、余談で蛇足になりますが。

 主人公とヒロインの名字、読み終わってもなおルビがないと読めない問題。

 「青天目蒼真 → なばため そうま」

 「日月昴 → たちもり すばる」

 これって難読名字、なんでしょうか? それともわたしの知識不足なのか。どちらにせよキャラ名がスッと読めないのはなかなか大変でした……。

   

 

総評

 ストーリー・・・★★☆ (5/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 微笑ましい元魔王と元勇者のラブコメが楽しめる良作!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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