今回の感想は2024年1月のMF文庫J新作「隣の部屋のダ天使に、隠しごとは通じない。」です。
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あらすじ(BWより引用)
三年前、人類の半分が死亡するウイルス拡散事件が起きて以来、世の中には超常的な犯罪が蔓延るようになっていた。
上空五百メートルにある密室で殺人が起きたり、学園の生徒が忽然と姿を消したり、大量の人命が生贄となったり。およそ人には不可能と思われる事件の数々は、すべて超常存在「悪魔」によるものだった。
それらを解決するのは、天国から派遣された怠惰で人見知りな美少女堕天使と、人類史上最悪の犯罪者――ウイルス拡散事件の犯人――の息子である高校生。
二人は自らの存在価値を証明するため、凸凹バディを組んで悪魔犯罪に立ち向かう!
感想
決して悪くはない。けれど、特別良くもなく。
正直な印象としてはそんな感じでしょうか。
本作の舞台はパンデミックが起こり、人類が激減した世界。
それに危機感を覚えた上位の存在である天使や悪魔が人々の信仰や畏怖を集めるために、悪魔が犯罪を起こし、天使がそれを解決するようになってしまった。
研究員であった父がパンデミックの犯人となり、犯罪者の息子として暮らしていた主人公の家にある日天使の少女が押しかけてきて……、というのが本作の導入。
そこから、天使のヒロインと共に悪魔犯罪を解決していく、というのが大筋になるわけですね。
そんな本作はミステリというジャンルではあるものの。
事件の内容自体は完全に超常の力によって引き起こされるものとなっているので、読者目線で推理したりして楽しめるようなものではありませんでした。現実的な理論も何もなく、そういうことができるからできる、と言われて解決するようなものですからね。
そのため、どちらかと言えばファンタジー作品として天使と悪魔の謎解き勝負を見ていくのがメインとなっていたように感じました。そして、そういう意味で見るのなら悪魔は事件を起こして天使に謎を出す、天使はそれを解く、というある種のゲームモノもののような面白さはあったと思います。
そして、人間の命をコマにして、勢力争いをするという天使と悪魔という構図が、文字通りに人間よりも上位の存在である天使や悪魔がいる世界観というのを見せる良いアクセントになっていました。
一方として。
キャラの魅力という部分では、少し個人的には期待を満たしてくれなかったなと。
天使であるヒロイン。1人のキャラとして見れば、主人公へ向ける想いだったり、普段はぐーたらでも事件のことになれば真剣になるギャップなど、中々魅力的な要素はあったのですが。
天使である、というポイントで大きな強みがあるかと言われたら、うーん・・・となってしまい。天使ヒロインという要素でなくても、隣人ヒロインモノのような形、押しかけヒロインのような形、もう一歩掘り下げたらぐっと魅力が増すだろう要素はたくさんあるのに。その一歩が足りないのですよ。
一方の、主人公の立ち位置は、なんだかパッとしない。天使だけど怠け癖がある彼女を上手くサポートできるのかといえば、いなきゃいないでも何とかなりそうだなとは思えてしまったし。彼自身が彼女に特別な感情を持っているわけではなく、どちらかと言えば父の関わった事件を知りたいという気持ちで協力をしているだけの立ち位置(あまり活躍はしない)となると、なんだかなぁと。
シンプルに、もう少しキャラの掘り下げがあってほしかったなと。それは天使であるヒロインだけに留まらず、犯罪者の息子として扱われている主人公も含めて。そういう部分の深掘りがなく、キャラが属性だけになってしまっているような感じでしょうか。異種族恋愛的なラブ、バディモノのような絆、どういう形であれ2人の関係性で魅力があるならそれでも良かったのに、そうでもない。
これが個人的な好みで期待が外れてしまったものになったと思っています。
そういった感じで、総括すれば。
全体としてなかなか面白い設定、楽しく読める空気感や、ファンタジー謎解きバトルのような要素。面白い部分は多々あれど、そこから一歩踏み込んだ旨みをイマイチ味わい切れなかった作品でした。
なので、良くも悪くも。ほどほどに楽しめた作品という感想に留まりました。
総評
ストーリー・・・★★☆ (5/10)
設定世界観・・・★★★☆ (7/10)
キャラの魅力・・・★★☆ (5/10)
イラスト・・・★★★☆ (7/10)
次巻以降への期待・・・★★★ (6/10)
総合評価・・・★★☆(5/10) ほどほどに楽しめました。
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
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