今回の感想は2024年2月のスニーカー文庫新作「人類すべて俺の敵」です。
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
第28回スニーカー大賞の頂点 一人の少女が為、世界に仇なせ
「人類は、《魔王》によって滅ぼされるだろう」
突如、全人類の前に降臨した神はそう告げた。
1ヶ月ほど前から無差別に発生した不審死により、既に八億人もの命が失われていた。《魂魄剥離》と呼ばれるその現象が、あどけない少女にしか見えない《魔王》によるものと神は言う。
厄災を阻止すべく、人類を代表する十人の天使が選出され、《人類》対《魔王》――《聖戦》の火蓋が切られる。
震撼する世界で、ただ独り高坂憂人だけは少女を知っていた。彼女が世界の敵に仕立て上げられ、助けを求め手を伸ばすか弱き存在であると――。
ひとりの少女が為、世界に仇なせ。
感想
うん、しっかり面白かったです。
本作の舞台となるのは、神の手引きによって人間を間引くための魔王という存在と、それを阻止するための10人の使徒が生み出されてしまった世界。日ごとに何千万と人の命を吸収してしまう魔王は、しかしまだ年端もいかない少女。
戦いに巻き込まれた主人公は、そんな少女を守る眷属となってしまい世界と戦うことになる……、といった感じのお話。
この作品は、何より面白い部分がハッキリしていた。これが良かったですね。
まずは設定から分かる、継続的なバトル展開。
使徒それぞれが能力を持っていて、どんな相手が次にはやってくるのかとワクワクできますよね。一方で、主人公サイドは日ごとに魔王が人の命を吸収してパワーアップするから、時間が経てば経つほどインフレしている。まさに魔王という悪側らしい恐ろしさがあります。
すると、今度は使徒側がどうやってそんな主人公に食らいついていくのかという興味が生まれてくるのです。
それから、神の手引きによって選ばれた魔王と使徒たち。
神自身が、人々の営みを楽しんで傍観する立場であるために、選ばれたのは誰も彼もがワケありな少年少女たち。それ故に生まれるドラマ性、少年少女だからこその感情や苦悩みたいなのを踏まえてバトルになるというのは、やはり真っ直ぐな面白さがあるって思いました。
そして、個人的に良いなと思ったのは、主人公の日常との繋がり。
突然巻き込まれて、逃避行を始めることになって、日常から切り離されてしまった。
電話で母親や、幼馴染の少女と繋がることしかできないような状況。それでも、その小さな繋がりがあることで、まだまだ完全に非日常に堕ちてしまったわけではないという一縷の光のようなものがある。
これが、今後主人公の助けになるのか、はたまた完全に断ち切られて修羅の道になるのかという鍵になっているように感じてなかなか面白いのではないかと思いました。
一方で、そこから逆に。
まだ、本作は物語が始まったばかりという印象が大きかったように思います。
使徒との戦いも、まだそこまで大きく激闘という感じにはなっていなかったですし。タイトルが示すほど、主人公が孤立している感じもしなかった。
主人公と魔王の少女の関係性も、現状では主人公が守るだけの状態であり。それも主人公自身の性格や過去に起因して、守らなきゃという使命感のようなものが強く。主人公からヒロインへ向ける感情はそこまで感じられない。さらに、魔王の少女自身もその背景を踏まえるとまだ彼女自身が大きく動き出すような雰囲気もないので、今後に期待という要素で残されてしまっているんですよね。
そうなると、本作はしっかり面白い要素はあるのだけど。
1冊を使って下地を丁寧に敷いてくるような作品であり、この1巻だけを見てめちゃめちゃ面白いっていうようなタイプではなかったのかなと、そう思いました。
総評
ストーリー・・・★★★☆ (7/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★☆ (5/10)
イラスト・・・★★★ (6/10)
次巻以降への期待・・・★★★☆ (7/10)
総合評価・・・★★★☆(7/10) しっかり面白みはあり、今後次第ではいっそう面白くなれる作品!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
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