ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part141】魔女に首輪は付けられない

 今回の感想は2024年2月の電撃文庫新作「魔女に首輪は付けられない」です。

魔女に首輪は付けられない (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 ☆☆☆応募総数4467作品の頂点! 第30回電撃小説大賞《大賞》受賞作!☆☆☆

 貴族階級が独占していた魔術が大衆化するとともに、犯罪率が急増。対策として皇国には魔術犯罪捜査局が設立された。
 捜査官であるローグは上司ヴェラドンナの策略により〈第六分署〉へと転属。そこは、かつて皇国に災いをもたらした魔女と共に魔術事件を捜査する曰くつきの部署だった。
 厄災をもたらすまでの力を有するが故に囚われ、〈首輪〉によって魔力を制限された魔女たち。だが、〈人形鬼〉ミゼリアをはじめ、魔女たちはお構いなしにローグを振り回し――!?

「ローグ君、一言でいいんだ。私に命令してくれよ。その男に魔術をかけろって。一言でいいんだよ。そいつの精神は崩壊するけど事件は解決するよ!」

 魅力的な相棒(魔女)に翻弄されるファンタジーアクション!

 

感想

 手堅さを是とするか、真新しさがないのを否とするか。

 良くも悪くも「普通」で「テンプレ」を感じる。

 本作の率直な印象としてはこんなところ。



 まず、本作の内容を軽くさらっておくと。

「魔術による犯罪が増加している世界観で、魔術犯罪を取り締まる組織に所属する主人公が、大罪を犯して虜囚となっている魔女たちと共に事件を解決をしていく。」 

 そんなお話になります。



 そして、本作の良かった点を挙げていきますと。

文章の読みやすさ」「読者の期待を裏切らない展開」「食えない魔女たち

 そんなところでしょうか。

 

 もう少し詳しく話しましょう。

・文章の読みやすさ

 これは文字通り。読みやすかったです。内容からすれば、結構堅苦しい重々しい作品になる素養は全然あったと思いますが、本作はかなり軽快に読めました。設定こそやや暗めなものがあれど、基本的には王道のファンタジーのテイストです。

 

・読者の期待を裏切らない展開

 これも文字通り。とにかく読者の予想を外しません。これも読みやすさに繋がっていたかもしれませんね。しかしながら、これは同時に「真新しさがない」「本作独自の個性を感じられない」というマイナスにもなりうる部分。本作の「良くも悪くも」を感じた点の1つでもありました。

 

・食えない魔女たち

 主人公が配属された組織には魔女が4人。そのどれもが食えない奴で、悪辣であると言えるでしょう。特に表紙にもなっている子は、最初から最後まで人の神経を逆なでするような会話しかしてこない。これに読者もイラッとしそうな感じはしますが、個人的には魔女という普通らしからぬ、を一貫していて良かったと思っています。

 また、この1巻で深掘りされたのは「聖女」と呼ばれる魔女。聖女なんて呼ばれるような子が何故大罪を犯した魔女になっているんだ? という疑問。彼女の性根を見れば、たしかになかなかどうしようもない性格をしていたなと。更には、ヒロインとして主人公に向け始めた好意、ここにすらそのどうしようもない性質(性癖とも言って良いのか?)が深く根付いているように感じて、こういうのはわたしの好みにしっかり刺さった部分。正直、この子単体で見ればこの作品を好きと言ってもいいでしょうね。



 では、一方で本作の何が弱いと感じたか。

読者の期待を越えない」「主人公の深掘り」「作品の強み、ドコ?

 と、いった感じになるでしょうか。

 

 細かく話しましょう。

・読者の期待を越えない

 これは先ほども触れましたね。読者の予想を大きく外すことがない。それはやはり期待以上の満足感を得ることができないことになります。そして、それだけならそういう作品はいくらでもありますし、わたしは読みやすくてほどほどの作品にはそれはそれで楽しみ方があると思っているので悪いとは言いません。

 なので、本作で何が痛手になったかと言えば

この作品は電撃文庫の新人賞大賞で銘打って出されている」っていう部分なんですよ。

 そうである以上「大賞という安心感」を求める人もいる一方で、「大賞なんだから」という期待を寄せる人だって必ずいるんですよ。前者の人は、この作品の外さない手堅さを良かったと言うでしょうが、後者の人は真逆の感想を持つことでしょう。

 なので、やはりこれは1つ「良くも悪くも」なんですよ。

 

・主人公の深掘り

 これはもう、シンプルに足りてないです。

 基本的に可愛い女の子を見るためにラノベを読んでいるわたしですけど。

 やっぱり主人公の深掘りって大事だと思いますよ。

 それは、主人公が作品の中心であるという一般論もそうですし、主人公がしっかり描かれないとそれに好意を寄せるようになるヒロインの魅力が感じられないというわたし個人の意見でもそうです。

 魔術犯罪に対して、それを取り締まる者として。「どのくらいの想いの強さがあるのか」「何故、そうまでして犯罪を赦せないのか」「そして、それを踏まえた上で大罪人である魔女たちにどういうスタンスで向き合っているのか」という最低限は欲しかったです。一応、それらしい理由を会話の中に織り込んでいますが、それだけだとやはり足りないように思いました。

 

・作品の強み、ドコ?

 ここまで話してきて、良い部分、そうでない部分が色々あるのだと自分でも再認識しました。そうして最後に残ったのが、この疑問になるのです。……これがね、本当に分からないんですよ。

 あらすじから考えると、本作は「魔女に振り回されるファンタジーアクション」なので魔女たちのキャラクター性、主人公と魔女たちの関係性、ファンタジーアクションの部分、などが大きな魅力なのだと考えられます、が……、うーん?

 既に述べましたが魔女に関して、表紙の子は終始食えない発言で主人公をからかっていた、聖女と呼ばれるサブヒロインはしっかり掘り下げられた。となると、本作は魔女のヒロインたち一人づつをこれから巻数を重ねる中で掘り下げていく、多人数ヒロイン作品としての面白さは間違いなくあるものと思われます。しかしながら、それは巻数を重ねる前提。この1巻で表紙の子でないヒロインを掘り下げたことからも、メインヒロインは最後に輝かせるのだ、という今後を見据えたものを感じます。なので、これを1巻読んだ段階で作品の大きな強みと言うのはなんだか違和感。

 じゃあ、魔女と主人公の関係性だ。と言いたいですが、先ほども言いましたが本作は主人公のキャラが曖昧なままなんです。それでどうしたら、魔女との関係性まで掘り下げられるのか。魔女に振り回される、は事実として。そこから一歩踏み込んだこの主人公だからこそ、こんな食えない魔女たちとも良いハーモニーを生み出すんだ、というものは正直まだ感じられなかったです。

 ならばファンタジーアクションの部分で見せればいいだろ、と思いますが。これは最初の良い部分として特別ピックアップしていない時点で察してくださいね。普通ですよ。普通に良い感じ、悪くはない、です。

 ……、全てを否定し尽くしました。やはりこの作品最大の強みってなんでしょうか?

 やっぱり聖女の子だったのか? 1巻時点では間違いなくそうとしか思えない。サブヒロインが最大の強み、なるほど。




 と、まぁここまであれこれ言いましたけど。

 決定的に悪い部分って本作にはなかったですよね。

 主人公が少し物足りなかったり、作品の強い軸を感じられずとも。

 ヒロインに魅力があって、今後魔女たちを順々に掘り下げるだろうという期待があって、読みやすく王道のファンタジー作品。これだけで十分ではないですか。何を文句を言う必要があるのか。

 

 そう思えてしまうからこそ。

 本作は手堅さを是とするか、真新しさがないのを否とするか。

 なのですよ。


総評

 ストーリー・・・★★★ (6/10)

 設定世界観・・・★★★ (6/10)

 キャラの魅力・・・★★★ (6/10) ※聖女の子だけみれば★8でどうぞ

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻以降への期待・・・★★★ (6/10)

 

 総合評価・・・★★★(6/10) 良くも悪くも普通、ですね

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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