ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part138】これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。

 今回の感想は2024年1月のオーバーラップ文庫新作「これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。 」です。

これが「恋」だと言うのなら、誰か「好き」の定義を教えてくれ。 1 (オーバーラップ文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 この「好き」は《偽物》――なんかじゃない。

 これは、令和(イマ)を生きる大学生たちの不器用で焦れったい等身大の恋物語

 

 拗らせぼっちの大学生・寺田悠には忘れられない過去がある。孤独を抱えた冬の夜の帰り道、公園で寒さに震えるあざと可愛い人気者の後輩・藤宮光莉から助けを求められ、家に泊めることに。その日から頻繁に家へやって来る光莉と重ねていく、温かな日常。その不思議な関係は、穏やかに続いていく――はずだった。

 「好きです、悠さん」二人の視線が絡み、距離がゼロへと近付く。頭のなかで誰かが言う。《普通》ならここでキスをするのだと。それができない恋は《偽物》だと。それでも――「ごめん、藤宮。俺はきっと《普通》の恋ができないんだ」

 オーバーラップ文庫大賞史上、最も不器用でもどかしい恋物語、ここに開幕。

 

感想

 なかなか面白かったのに……?

 読み終わってからの第一印象はこれでした。

 

 本作は、異性を好きになっても、そこに性的欲求を感じらせないアセクシャルな主人公が、その性質故に自らの気持ちの伝え方に迷って痛い失恋をした過去を引きずって、大学生になってからとある少女と出会うことから始まるお話です。

 ヒロインは家族の温もりを知らないままに育ち、可愛くて強い自分で振る舞うことしかできないタイプの子。お互い、自分に欠けたものを相手に求めていて、徐々に惹かれ合っていくような恋愛となっていました。



 主人公、ヒロイン、どっちも抱えているものがある……、みたいな部分で言えばよく見るやつと言ってもいいかもしれませんね。

 とはいえテンプレとかは決して悪いものでなく、読者としては入り込みやすい形があって、それ故にむしろ中身に集中できるというメリットがあるとわたしは思っています。

 

 そして、本作は基本的に展開に奇をてらった部分はなかったと思います。

 そうである分むしろ、主人公、ヒロイン、それぞれの視点一人称でそれぞれの心情をしっかり見せて丁寧に二人の進展を描こうとしている部分に好感が持てました。会話劇もクスリと笑えるものだったり、大学生らしい青春っぽさも感じられたりで、全体的に良い感じですし。それにやっぱり主人公とヒロイン、それぞれが問題を抱えているだけあって一筋縄ではいかない恋の進退はしっかりメリハリついた作品になるなと、そう思えました。

 

 そんな中で、本作の鍵となるのはやはり主人公の性質。

 好きだという気持ちはあれど、そこから一歩踏み込んだ行動で愛情を示せない。じゃあ自分はどうすればいいのかと。好きって一体何なんだと。

 そういう風に思い悩んでしまっている状態。

 これが一体、どんな風に作品のアクセントとして効いてくるのか。

 当然、それを期待して読むわけです。



 なかったわけですよ!



 ……、いや、これは流石に誇張しまくってますね。

 

 

 それゆえの失恋を抱えているものだから、未だにどうやって自分の気持ちを示せばいいかが分からず。相手からの好意を認めても、それに返せない。それで悩み続けることは恋愛ストーリーの大きなハードルとして立ちはだかり続けるわけですから。

 アクセントにはなっていましたよ。

 

 でも、それ以上がなかったんですよ。

 てっきりこの作品1巻で完結するタイプかと思っていたから、主人公の問題へのアンサーがあるかと思ってたら全くないまま、現状維持で次巻へ続くだったんです。

 わたしは思わず「???」ってなりましたよ。宇宙猫です。

 

 普通であれば、ですよ。

 こういう分かりやすい問題が残されるのは、続きへの期待という形の満足感になるでしょう。

 しかし、本作の場合はこの1つが最大にして唯一と言っていいほどの問題で、それを冒頭からずっと示し続けているのに、それを解決しないままだと「この先、この問題解決以外に何をするの?」という先延ばし感、ひいては消化不良感にしかならない気がするのですよ。

 仮に2巻完結でこれを上下巻として出したり、2ヶ月連続刊行とかをするのであれば、1巻がこの段階で終わったりするのも納得できるんですけども……。

 

 なので本作を読んだ気持ちとしては。

 序盤「アセクシャルな主人公、なかなかどうなるのか気になるな」

 中盤「ふむふむ、こういうタイプか。普通に良い感じだね」

 終盤「ここからグッと盛り上がって……、盛り上がって……?」

 結末「え、ここで終わり? 嘘でしょ……」

 という流れで、終わったようになります。

 

 本当に途中までは素直に良かったんですけど……、

 

 

総評

 ストーリー・・・★★★☆ (7/10)

 設定世界観・・・★★★☆ (7/10)

 キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★★ (6/10)

 

 総合評価・・・★★★(6/10) とにもかくにも 消・化・不・良!

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp