ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part154】竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る

 今回の感想は2024年2月のメディアワークス文庫新作「竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る」です。

竜胆の乙女 わたしの中で永久に光る (メディアワークス文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 物語は、三度、進化する。第30回電撃小説大賞《大賞》受賞作。

「驚愕の一行」を経て、光り輝く異形の物語。

 明治も終わりの頃である。病死した父が商っていた家業を継ぐため、東京から金沢にやってきた十七歳の菖子。どうやら父は「竜胆」という名の下で、夜の訪れと共にやってくる「おかととき」という怪異をもてなしていたようだ。

 かくして二代目竜胆を襲名した菖子は、初めての宴の夜を迎える。おかとときを悦ばせるために行われる悪夢のような「遊び」の数々。何故、父はこのような商売を始めたのだろう? 怖いけど目を逸らせない魅惑的な地獄遊戯と、驚くべき物語の真実――。

感想

 うーん、評価に悩む!

 読み終わった第一声はこれでした。

 

 

 本作の概要はあらすじにある通り。

 「おかととき」と呼ばれる怪異をもてなす「竜胆」という役割を父から継ぐことになった少女・菖子。父に仕えていた3人の下男と、3人の商物の男たち。彼らに従っておかかときをもてなすとそこで行われるのはあまりに凄惨な遊びの数々……。

 といった感じで。目を覆いたくなるくらいの描写の数々。おかかときというあまりに奇妙な存在。竜胆という役割を引き継いだものの、そんな現実を前にしては打ちのめされる菖子。――というストーリーはなかなか面白い要素が揃ってますし、えぐみのある描写が苦手でなければ楽しめるとは思います。

 

 しかし、本作の本題はそこじゃないんですよね。

 本作はいわゆる”ネタバレ厳禁”の作品。

 すなわち後半からガラッと雰囲気を変えて、様々な真相が明らかになっていくような物語の構成をしています。

 

 そして、わたしが問題視するのもここです。

 後半から一気に面白くなるなら、それはいいことじゃないのか? と聞かれればそれはもちろんその通りです。実際、わたしはこの作品の物語構成、そしてそのアイデアそのものに文句を言うつもりはありません。

 真相を知るとなるほどな~と感心しましたし、こういう話を読者に見せたいという作者の想いも理解できました。こういう作品に一度触れてみるのはいい体験になるようにも思いました。



 じゃあ、一体何が問題なのか。

 と問われるとその表現の仕方、なんですよね。

 

 本作は序盤から「明らかにおかしい要素」が常に存在しています。しかし、それに関して一切触れることがないのです。

 

 いわゆるミステリー作品であれば、最初に謎が提示されて。それに対するアンサーに繋がる情報が少しずつ描かれていきます。そして終盤にそれまでの情報を整理して、一気に真相へと踏み込むことでしょう。

 

 しかし、本作は最初から明らかな謎が存在する。しかしそれに対する言及は一切ない。つまり読者は何かあるのは分かるのに、それが一体何なのか検討もつかない。そんな違和感を抱えたままずーっと読まされるわけです。

 

 これが……、果たしてどうなんだろうかと。

 読者からしたら「謎の真相が分かるまでは読んでみよう」と思える人もいれば、「違和感がずっとあるのに何も手がかりがないの気持ち悪いなぁ」と序盤を読み進めるのが大変に思う人もいるのではないかと思うのです。

 

 これが、わたしの評価を悩ませる原因です。

 わたし個人としては正直、序盤パートは早くネタばらしをしてほしいと思いながら読んでいました。そして後半の雰囲気が一変したところでようやく話の本筋が来たか、とワクワクするようになります。そしてその真相を知ってから、序盤の物語にはそういう意味があったのかと思えるようになりましたが……、

 これをまとめると「話として意味は分かったものの、作品の面白さとしては享受ができなかった序盤の展開」というものが褒めるべきなのか、文句を言うべきなのかが分からない状態で残ってしまったんですよね。

 

 そうなると、これはどちらで評価すればいいのか。

 例えば、これを他人にオススメするのを考えたら「序盤はちょっと意味分からんけど、後半からは面白いからがんばって読み進めてねっ☆」って言うんですか? いや序盤から面白いのをオススメしてくれよ、って思われませんか? そうなるとやっぱり序盤パートは欠点って言えなくもないですよね……、といった具合で悩む悩む。

 

 やはり序盤は重要ですよ。

 読者を掴む第一印象がある場所です。

 そこで「先を読もう」と思えるか、「読み進めるのが大変……」と思うかで、作品への気持ちってガラッと変わると思うんです。

 そのどちらを感じてもおかしくない本作は、やは個人的にどうなんだろうなと思って仕方がありませんよね……。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★☆ (5/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★☆ (5/10) 

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 

 総合評価・・・★★★(6/10) 物語構成アイデアは面白いので、一度気になったら読んでみていいと思います。(ただしわたし個人としては、序盤の扱いに悩むので総合評価は★6にとどめました)

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp