ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part153】これはあくまで、ままごとだから。

 今回の感想は2024年4月の電撃文庫新作「これはあくまで、ままごとだから。」です。

これはあくまで、ままごとだから。 (電撃文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用

 恋もキスも、全部本気で、全部嘘。甘くて苦い、高校生の“おままごと”。

 とある事情で地元を離れて親戚の家に身を寄せることになった蒼一朗。そこで再会したのは遠縁にして幼なじみの深紅。小さいころ、「おままごと」に強引に付き合わされた仲だった。

 そんな彼女から、あの時と何一つ変わらないノリで提案されたのは――。

 「久々に恋人ごっこ、してみたくならん?」

 「お、懐かしいな。やろうやろう」

 最初はただ楽しくバカップルを演じるだけだった。だけど徐々に過激さを増していき、抱き合ったり、キスしたりもするようになる。真剣に演じる「ままごと」にのめり込み、やがて本音と建て前の区別がつかなくなっていく。お互いにとってはあくまで「ままごとの好き」だから、決して「本気の好き」は口にできないまま。

 終わりのない恋愛ごっこによって揺れる、二人の隠された想いとは。

 

感想

 これはたしかに「ままごと」だったな。

 個人的な、読み終わった印象としてはこれです。

 

 本作は、端的に言えば幼馴染同士のラブコメ

 幼い頃のままごと遊びの延長に徐々に本気の想いが生まれてきてしまうのだけど、嘘と建前の中に迷い込んでしまって……、といった雰囲気の作品。

 

 そんな本作は、とにもかくにも「どうしてそうなるんだ……」と言いたくなることのオンパレードです。わたし自身が状況を俯瞰してカップルを見るタイプの読者だからこそ、より一層にそう思うのかもしれませんが。

 

 何よりわたしが引っかかってしまったのは、その「どうしてそうなるんだ」という問題の根底にあるもの。

 それが主人公、ヒロインの家庭環境にあるんですよね。どちらも父母の良好とは言えない関係性の中で育ってきてしまったが故に、恋愛に対する偏った価値観や思考が刻み込まれてしまっている。その結果、ただでさえままごとで繋がる関係が泥沼化してしまう、と。

 

 これが、どうにもわたしには歪んだ恋愛模様ではなく「歪ませられた恋愛模様」に見えてしまったのですよ。

 家庭環境に問題を作るな、と言いたいわけではないのです。それがキャラの背景となり、物語に山谷を生み出すものとなり、作品の面白さを引き出す。というのは、多くの作品で見てこれまでしっかり感じてきているもの。

 しかしながら、本作の場合は。主人公と幼馴染のメインヒロイン、更にもう1人のヒロイン。三人もいて、その全員が全員それぞれ家庭環境に問題あって価値観が……、なんていうのはもはや恋愛を泥沼化させようとしてそういう設定にしているようにしか見えないじゃないですか。

 そんな状態で複雑になっていく登場人物たちの関係性なんてものを見せられても「そりゃそうなるわ」としか言えないですし。言葉を選ばず言うなら、冷めるんですよ。

 更に言えば、わたしにはこうなると話の中心が「幼馴染同士の嘘と本音」ではなく「登場人物の背景」にすり替わっているようにすら感じます。あらすじ詐欺を受けたような気持ちがほんの少しあったりもします。

 この背景部分が、何かしら別の部分での繋がりがあり今後もっと密接に物語に関わってくると言うのであれば、わたしのこの言葉は「まだ1巻だったし、描ききれていなかったのだろう」で済む話ですが。

 

 ただ、そうであったとしても。

 この1巻の時点では「元々少し面倒な幼馴染という関係性」を「外からの肉付けで更に面倒くさい状況にしてやりましたぜb」というのがわたしの印象になってしまいます。

 本作最大の魅力はキャラであるはずなのに、あまりに背景設定が強すぎてそこに問題の中心がすり替わってしまっているように見えることはどうにも腑に落ちない。これが最初から、設定ベースで広がる話だったら良かったのかもしれませんけど……。

 幼馴染、ままごと、面倒くさい、というベースが良かったのにどうしてこうも余分な外付けの設定を増やしてしまったのかと、思ってしまいます。

 前作のような友人グループ内での恋愛によるグループ崩壊、という方がよりシンプルで納得できる恋愛の恐ろしさを描けているように思ってしまうのもマイナス要素でしょうか。まぁ、前作は前作でと、思うこともありますが。

 

 そういう意味で総評すると、これはいたずらに作られた設定と環境の「ままごと」だったな。それがわたしの感想となりますね。



 ……、もっと個人的な好みだけで話せば。

 面倒くさい幼馴染のヒロイン×ヒロインの複雑な事情、という設定一本を深めるだけでも十分に面白くできたと思うからこそ、主人公や他のヒロインの背景まで余計に複雑化したことに納得がいかないという感情もあったりしますかね。

 

 

総評

 ストーリー・・・★★☆ (5/10)

 設定世界観・・・★★ (4/10)

 キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10) 

 イラスト・・・★★★☆ (7/10)

 次巻以降への期待・・・★★☆ (5/10)

 

 総合評価・・・★★☆(5/10) これはたしかに、ままごとですね。

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

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