今回の感想は2024年8月の電撃文庫新作「宮澤くんのとびっきり愚かな恋」です。
※本作は2巻で完結とのことです。そして2巻感想を追記しました。(2025年2月9日現在)
※画像はAmazonリンク
あらすじ(BWより引用)
昔好きだった幼なじみのアイツは、今はビッチになっていた――。
小学生の時からの幼馴染・藤代瑠音(ふじしろ るいん)は、誰だって自然と振り返ってしまうような美人だ。突き抜けるように快活で、いつでもオシャレで、みんなの注目のギャル。そして――自他ともに認めるビッチだ。常にセフレがいて、昨日も駅前でイケメンとイチャついているのを目撃した。
一方の俺こと宮澤恆(みやざわ わたる)といえば学校の日陰者で、今や瑠音とは全然縁もなくなっていたのだが……。
「ねえワタ。私たち、付き合わない?」
俺と君が? いやいや、それ絶対に裏があるじゃん。そう思いつつ、かつての初恋相手である瑠音からの告白をつい受け入れてしまい――。
性に奔放な彼女と過ごす、青くてちょっぴり危険なラブストーリー。
感想
この2巻前提の引き方は反則ですね。なので、早く2巻を出しましょう。
という気持ちと、真面目なところで好きになれるキャラと好きになれないキャラの差が大きいなと感じた作品でありました。
さて、改めまして。
本作は小学校の頃からの付き合いであるヒロインと主人公の複雑な恋愛模様を描く作品。主人公自身は初恋の相手である彼女に小学生の頃告白して受け入れてもらうも、数日後に他の男子と付き合っている姿を目撃してしまって自然消滅を選んだ過去のトラウマを持っており、高校生になった今再びセフレとイチャイチャする彼女を見かけるといった状況から物語が始まっていました。
まずこの作品は冒頭から主人公の過去を引きずり方が受け入れやすいというのが良かったですよね。
ルインとの過去にトラウマがある、しかしそれは決定的な断然という形ではなく未練が残るような後味の悪いもの。そうであるからこそ未だに何かにつけて彼女を目で追ってしまうし、そうする時間の分だけ彼女への何からの想いは募っていってしまう。
その結果、彼女の打算と事情ありきのお付き合いも受け入れてしまう。更には男を取っ替え引っ替えする彼女の性質をずっと見てきているがために、そんな彼女であることを受け入れる下地すら整ってしまっている。
もうとっくに危ない橋へと足を踏み入れた状態でありながらも、その危険性を正しく理解できていないような、そんな不安を感じさせるこの主人公の態度は今後の波乱を期待させてくれますね。
一方でヒロインであるルイン。
彼女の心情は主人公が聞く形でしか語られないものでまだまだ分からないこともあるでしょうが。
少なくとも男を取っ替え引っ替えすることに関しては、そこに善悪と言った概念を感じさせることはなく。彼女はもうそういう性質を生まれながらに持ってしまっている人間であるのだと。そしてそんな自らの在り方を容易に曲げることはないのだという、一本キャラの軸があるような描き方をしていたのがすごく良かったです。
明確な悪女ではなく、されど決して都合の良い女ではなく。普遍的な価値観からすれば貞操観念が乱れているのだろう、彼女は明らかに主人公や周囲の人間を自分勝手な都合に振り回すような迷惑な女なのだろう。しかしそういうもの含めて彼女という1人の人間なのだと、そう思えるものがあるのなら少なくともわたしはそんな彼女の普通ではない在り方が生み出す恋愛模様を見てみたいという気持ちがあります。
しかしながら、最初に言ったように個人的に好きになれないキャラがいまして。
それがもう一人のヒロインである果南という女の子。
本作の序盤、ルインが付き合ってほしいと打診した理由として、ルインがセフレくんと一緒にいるところを、セフレくんの彼女である果南という子に見られてしまったから。主人公と付き合うことであくまでただの友達ですよという主張をするため。
すなわち、ルインのセフレくんと、その彼女である果南。この二人はどうあっても展開に絡んでくるわけです。そして果南は主人公と同じ部活動に所属している、となれば泥沼の予感しかしませんね。……まぁ、実際その通りになるわけですが。
しかしながら、……この果南という子の心情描写と、そこからの言動。これが言わんとすることは分かるんだけども……、その後の言動も納得はできるのだけど……、これがどうにもわたしには展開としての機能しか持っていないように見えてしまってですね。
主人公もルインというヒロインも。どちらも明確におかしなところがありながらも、そうであるが故のこいつらがどう進んでいくのだろうという期待があるキャラになっていて。果南の彼氏でありながらルインのセフレになっている男も、ぶっちゃけ言ってることは相当ひどいものではあるけど。これもそういう人いるよねって感じのズレ方で、むしろそんな彼がどう動くのか気になるところはあるんですよ。
ただ、果南という子に関しては。
場を荒らすためのポジション以上の見所を現状では感じられないんですよ……。
そしてそうであるからこそ、彼女が大きく動き出す本作の肝となるだろう「えっ、こんなところで1巻終わりなの!?」っていう部分の衝撃に若干の冷めた気持ちが入ってしまったのが惜しいんですよね。ここでもう少し感情を揺さぶるようであれば、これはやべぇ波乱の幕開けだぜっていう読後感でもっと素直に満足できたのですが……。
ともあれ、1巻の終わり方で2巻が気になるのは間違いないですし。
まだまだ始まったばかり、ということでしょう。
総評
ストーリー・・・★★☆ (5/10)
設定世界観・・・★★★ (6/10)
キャラの魅力・・・★★★ (6/10)
イラスト・・・★★★★ (8/10)
次巻への期待・・・★★★★ (8/10)
総合評価・・・★★★(6/10) 現状これからの展開に期待という感じですね。
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。
(追記)2巻感想
2025年2月、続編で完結巻となる2巻が発売されました。
タイトルは「宮澤くんのあまりにも愚かな恋」ですね。
※画像はAmazonリンク
そして、この2巻についての感想に触れるのですが。
その感想は、今回わざわざ2巻の感想を追記という形にしているにも通じますが、
1巻で今後に期待、と言ったものを満足するものはありませんでした。
と言う話です。
ですので、普段はTwitter(現X)でも感想ツイートをするものを、ブログ内のみで収めるための措置というわけですね。
それでは感想です。
1巻の衝撃的な終わりから果たしてどう続くのかと思った物語。
正直、序盤から相当読むのがキツかったです。
その理由としては主に、1巻でも言っていた果南があまりに本作で浮きすぎてて舞台装置にしか見えないというものです。そのため彼女の度が過ぎた行動による展開が、1巻の終盤のときと同様冷めた目線でしか見られませんでした。
また過度な官能描写はラノベでこういうのいらない気持ちがやっぱりありますね。わたしはそういうのを読みたいなら、素直にそういう漫画や同人誌を読んだりするので……。
そして、本作の鍵であっただろうルインやワタが抱えている恋愛やお互いに向ける幻想のようなところを、どう解釈していくのかという点が、この果南との無駄な描写に尺を割きすぎていて全然深掘りできていないように思いました。
終盤でようやくこの二人に触れられたのですが、結局1巻の時点のルイン知っていれば、そこまで突飛な結末になっていなく、想像の範疇でしかないのがどうにも肩透かし感がすごいんですよ。
そこからもう少し踏み込んだところが見たかったんだよ、という気持ちが止まりません。だってルインとか自分自身が浮気することを堂々と正当化しているけど、純粋に好きという気持ちで言えばワタに向ける何かがあるわけでしょ? その絶妙な差異の部分が今後、彼女の中で悩みになったりしないですか? それとも自分がそうだから、ワタもそうでいいと本当に結論通りに過ごせるの? ルイン自身がワタの行為に対してほとんど責めることなく受け入れたのは、自分を顧みて思うことが少なからずあったからじゃないんですか。大事なのは事実じゃなくて、そこにある感情ではないのですかね、こういう作品に関しては。だからこそ、果南との行為を生々しく描写することも、わたしはそこまで重要ではないと思ってるんですよ。
挙げ句の果てに、この突飛でもない結末に至るために、二人が面と向かって話す場を生み出したのが、全く想像もしていない斜め上からの飛び道具だった件です……。
マジでこれは見たとき頭宇宙猫になりました。
とは言え、この過剰装飾みたいな斜め上飛び道具さんのおかげで、本作が如何に恋愛とかその周辺に対するものに過剰な幻想を抱き続けていて、それがどれだけ歪んでいるのかを読者だけでなく二人自身にもハッキリ見せるという点では正直褒めたい気分もあるんですよね。
だから決して、これを斜め下とは言いません。ある意味で必要な飛び道具ではあったから。二人の会話をする場を作るために、ではなく、作品の本質を具象化するために。
ただ、それでも頭宇宙猫の事実は消えないですし。前回からある程度触れられている部分ではあったけど。何故終盤に近づいたところで、こんな設定とか舞台装置的な部分でいきなり想像を超えてくるのか、コレガワカラナイ。
ですので、わたしの総評としては、
ルインという見せ方次第では化ける可能性しかない金の卵ヒロインを掘り下げず、舞台装置の部分だけで話を進めて完結まで持っていった作品……、これはわたしの求めているものではなかった。
という感じになりますね。
ですので、星評価の変化としては
――――
ストーリー・・・★5/10 → ★3/10
設定世界観・・・★6/10 → ★7/10
キャラの魅力・・・★6/10 → ★3/10
イラスト・・・★8/10 → ★8/10
次巻への期待・・・★8/10 → 完結巻なので評価なし
総合評価・・・★6/10 → ★4/10
――――
という形になりました。
基本的に完結巻を読んだり、シリーズを長く読み進めていけばその分だけ自然な愛着という意味での評価が上がるのですが、完結巻でがっかり感が増したというのは、個人的に珍しいことでした。
ある意味で忘れない作品として覚えておくことになりそうです。
以上で感想は終わります。

