今回の感想は2024年8月の講談社ラノベ文庫新作「七月の蝉と、八日目の空 -晴れ、ときどき風そよぐ季の約束-」です。
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あらすじ(BWより引用)
一生忘れたくない一週間――金色に輝く髪の少女と出会い、そして最期を見届けたひと夏の記憶。青春ミステリーの名手が贈る最新作!
中学三年の夏休み。初花晴は脚の負傷で大好きなバスケットボールを遠ざけ、地方にある祖父母の家に兄とともに滞在している。祖母ハルの勧めで、近くの山にある祠に兄とお参りに出かけると、その道中、森の中に広がる池の前にしゃがみ込む、華奢な金髪の少女と出会う。無表情で「自分の名前を知らない」「死にたい」とつぶやく少女を晴は説得。一週間だけ生きてみることにした少女をセミちゃんと名付けて友達になろうとする。しかし、セミちゃんの姿をを見ることができるのは晴だけで、兄らはまったく見えないという。記憶がまったくないようすのセミちゃんを放っておけない晴は、祖父母の家に招いて一緒に暮らし、寄り添うことにするが――!?
感想
ある夏の不思議な一週間を描く物語でした。
1冊でしっかり綺麗にまとまっており満足感のある作品でしたね。
改めて、本作のあらすじから見ていきますと。
中学三年生の女の子、晴。夏休みに地方の祖父母の家にやって来ていた晴は山でお参りをしているときに不思議な少女セミちゃんと出会う。自分の名前も知らず、死にたいと願い、晴以外の誰にも見えないセミちゃんを放っておけない晴は彼女を祖父母の家に連れて行き、しばらく一緒に暮らすことにするのだった。
という、導入から始まるお話でしたね。
やはり本作の鍵となるのはセミちゃんの正体になるでしょうか。
夢幻のような、幽霊のような、晴にしか見えない女の子。
果たして彼女はなんなのか? その謎は少しづつ深まるものの終盤までなかなかその全容が見えてきません。
そうでありながら晴の日常が進んでいく。セミちゃんと遊んだり、あるいはセミちゃんがせがむからということで怪我を理由に避けていたバスケットボールをもう一度やってみたり、チームの仲間たちとも会ってみたり……。
この明らかな謎が日常の中にあるにも関わらず、積極的にその真相を見ようとしない探ろうとしない。この本作の雰囲気全体が晴という女の子の抱える問題とそこから目を逸らしたくなる心を示すように感じ、そうであるからこそセミちゃんの正体が明らかになり、晴が本当に見ようとしなかった現実が明らかになるときの落差がグッときましたよね。そういう意味で現実的な晴という女の子と、非現実的なセミちゃんという女の子の組み合わせが見事だなと感じた作品でした。二人が出会って始まる一夏の不思議な思い出、だけで留まらないものが確かにそこにあったのです。またこの真相が明かされて改めて表紙を見るとまた感じるものがあるのも良いなと思います。
更に本作はセミちゃんの正体が判明することで、副次的にハッと気づかされるギミックも仕込まれており、個人的にはここがすごく好きでした。というのもこの本編では触れられることのない部分で実はまだ別の物語もあったんだよ、という想像を膨らませることのできる部分だったからですね。
総じて、晴という女の子を主人公にした悩みや苦しみを軸にしつつ。
セミちゃんという不思議な存在を組み合わせることで、物語としても読者が想像する晴の心情としても味わい深さが増している作品でした。
1冊で要素の1つ1つをしっかり丁寧にまとめあげているのでしっかり面白かったと思います。
総評
ストーリー・・・★★★★ (8/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★★☆ (7/10)
イラスト・・・★★★★ (8/10)
総合評価・・・★★★☆(7/10) 綺麗にまとまった単巻作品!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。