今回の感想は2023年12月のSQEXノベルス新作「オリヴィア嬢は愛されると死ぬ」です。
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あらすじ(BWより引用)
「勝手に目がそっち(オリヴィア)に行ってしまうんだ。なんて摩訶不思議な現象だ」「恋っていうんですよ、それ」呪われた屋敷で過ごす楽しく優しく――少し寂しい愛の物語
父を亡くし破産した大商家の長女であるオリヴィア=アシェルは、残された家族のために命をなげうつ覚悟で娼館の扉を叩こうとしていたところ、身なりのいい紳士に声をかけられた。
「どうせならば我が家の主人のために死んでくれませんか」と。
先々代オールステット夫人が残した“主人が愛した女は死ぬ”呪い――そんな呪われた屋敷にオリヴィアは身を寄せる。この屋敷の主人クラース=オールステットに愛され、死ぬために。その報酬である金貨100枚を家族に残すために。ところが、オリヴィアの前に現れた主人クラースは……なんか思っていたよりも面白い人だった。オリヴィアはクラースに“愛される”ように、クラースはオリヴィアを”愛さない”ように、二人の愛の駆け引きが始まる。
感想
これはとても心の温まる作品!
オールステット家の主人が愛した最初の女性は死んでしまう。
先々代の主人の浮気と、それに嫉妬した夫人によってもたらされた呪いを持つ曰く付きの家の現在の当主であるクラース。
倒産した実家のために身売りしようとしてた少女オリヴィアが、クラースのために彼の初恋相手となりその命を捧げてくれないかと彼の従者たちに頼まれるところから始まる物語。
お金を対価にその命を捧げるつもりでやってきたオリヴィアと、そんなオリヴィアに対して好きになるわけにはいかないとするクラース。
二人の恋は幸せに導くことができるのだろうか……。
と、そんな感じのお話でしたね。
本作の感想を語っていきますと、
まずね、クラースさんが可愛い!
線の細いザ・イケメンという感じの風貌なのに、愛した人が死んでしまうという呪い故に女性と関わることなく生きてきたものだから、初恋耐性がゼロ。
その結果、初めて目にしたときからもう完全に一目惚れ状態になってるのにその反応が完全に初恋をもてあました小学生のようというギャップよ。
「この可愛い生き物はなんだ」とか「勝手に目がそっちに行ってしまうんだ」なんて、本当にお坊ちゃまって感じのセリフ連発するの見てるとクスリと笑えてしまう。
一方の、オリヴィアもまた非常に魅力的な主人公で。
そもそも家族のために、という気持ちから始まった導入から良い感じですし。
それ以上に、やはり最初は「自分はもう覚悟を決めている。心を強く持って凜としていなければ」といった、どこか堅いイメージがあったものが、クラースと共に過ごす中徐々にそんな堅さがほぐれていくんですよ。
年相応の少女らしく涙を流したり、愛した人に甘えたりするようになる変化は見てて非常に可愛らしい。
そして、そんな二人だからこそ。
本作の定められた運命というのがじわじわ大きなものとなってくる。
呪いという得体の知れないものだからこそ、不用意な言葉や想いを口にすることができない。
最初にオリヴィアを誘ってきたクラースの従者だって、クラースのためを思っての行動だったものが、オリヴィアという人となりとクラースとの深まる愛情を目にする中で思ってしまうことがあって。
誰も彼もが言いたい言葉がたくさんあって、それをその場にいる全員が理解しているのに、それを伝えることはない。だからこそ全員がそんな不安定でかけがえのない時間を大切にしている。そんなしっとりした空気感とその場に根ざす想いの1つ1つに染み入るものがありました。
家族の愛。
姉弟の愛。
夫婦の愛。
恋人の愛。
一言で言えばこれはやはり「愛」です。
その形は様々あれど、誰も彼もが優しい屋敷の中で繰り広げられた恋物語はどこまでも愛で満ちあふれていた。
それは間違いなく読者の心に染みてくる。
またDSマイル先生の繊細なイラストもこの空気感を深めるのに一役買っていてイラスト+文章の作品としての満足感も見事。
実に綺麗な作品でした。
個人的には、この作品の根幹となる呪いとそこにあっただろう真実が非常に好きでしたね。
オリヴィアの怒りの声が全くその通り。
全ての元凶となったのは結局、ただの浮気1つで。
そこにあったのはやはり愛を求める心だけでしたもの。
さて、ここまで褒めることしかしなかった作品ですが。
本作は泣ける泣けるとTwitterで多くの人の感想を見て、そして仲良くさせていただいているフォロワーさんからいただいたものなのですよね。
ですので、泣けるかどうか、という観点の感想をズバッと言います。
この作品で、泣くことはないです。
というのも、既に述べましたが。
この作品はとにもかくにも言葉にできない想いとそこにある空気感を味わう作品でした。
そのため大きな感情が爆発するということがなく、それがわたし自身の好みに合わない。やはり呪いというものを前にしても、いやむしろそれを前にするからこそ抑えようのない感情が暴れてしまって溢れ出してしまってどうしようもない姿を見たいと思ってしまうような人間なのです。
そういう意味で、わたしはこの作品では泣けません。
泣ける要素ゼロと言っても良いです。
なので心温まる素敵な作品、というのがわたしの素直な感想でした。
そしてわたしの好みからは絶妙に外れるので今回の総評は★7どまりになります。
総評
ストーリー・・・★★★★ (8/10)
設定世界観・・・★★★☆ (7/10)
キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)
イラスト・・・★★★★ (8/10)
総合評価・・・★★★☆(7/10) 非常に綺麗で、心の温まる素敵な作品!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録
最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。