今回の感想は2023年12月のカドカワBOOKS新作「魔法使いの引っ越し屋」です。
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あらすじ(BWより引用)
王国一の魔法使いが紡ぐ出会いと別れ、とある日常の1ページ。
王都の片隅で小さな引っ越し屋を営む少女ソフィは、王国一の天才と謳われる魔法使い。どんな荷物も難なく運ぶ彼女のもとには、今日も特別な客からの依頼が舞い込んでくる。
ある日やってきたのは、こっそり隠居したいという「老いた勇者」。お屋敷いっぱいの家具や宝物はミミックに収納して運び、呪われた魔剣もきっちり封印。更には、引き留める人たちとのこじれた縁も綺麗にほどいてみせて――?
剣と魔法の世界で紡がれる、出会いと別れのファンタジー。
感想
これは良かった!
魔法使いの引っ越し屋。
どんな悩みや問題を抱える人の引っ越しでも引き受ける。
そんな噂の広まる引っ越し屋の主は、出会いと別れ、新天地に向かう人々が持つ希望と哀愁、そういったものをどこまでも大切にしようとする少女ソフィ。
彼女がその魔法と心で繋ぐ誰かと誰かの温かな想いで溢れる物語でした。
本作は短編形式で描かれる作品でして、その1つ1つの物語がとにかく上手かったです。
最初は「勇者の引っ越し」
老いた勇者、勇者という存在を求める国の重鎮、あるいは民衆。それぞれの立場が持つ感情の妙をしっかり引き出した上で、主人公のソフィの人となりをしっかり見せてくれる。
続く「神獣の引っ越し」では、
獣に育てられた子どもというたびたび目にするテーマを扱って、そこにある人とそうでないものの紡ぐ絆をガッツリと見せてくれた。アルくんが吐き出す子どもらしいまっすぐな感情の数々が非常に胸に刺さりました。
それから「魔法図書館の引っ越し」
ここではソフィ自身の引っ越し屋の背景を語り、魔法使いとしての規格外を見せつける大活躍で1冊終盤の盛り上がりを演出しながらも、それだけの大仕事だからこそ引き出すことのできた時を越えた故人からの愛というものを強く感じさせてくれましたね。
どのお話を見ても、しっかり心に刺さるものがあってすごく良かった。
そして最初にも言いましたが、どのお話でもソフィがそこに立ち会う当事者たちの持つ気持ちをしっかり繋ごうと努力して、幸せな別れと新しい希望を生み出そうとしているからこそ、それによって掴み取ることのできた最良の結果というものへの感動がひとしおなんです。
これは泣ける作品と言っても良い。
本当に胸にグッと来るシーンばかりですから。
さらに言うならば、ソフィは魔法使いとして規格外の魔法を使う。魔法学院を主席で卒業し、時代の魔法使いなんてものに認められるくらいには、自他共に認める最高峰の魔法使い。
そんな彼女だけれど、あるいはそんな彼女だからこそ。
自分の生い立ちと育てられた環境を踏まえた上で、富や名誉のためでない、誰かの幸せを導く引っ越し屋という仕事を誇りと責任を持ってやっているのだというスタンスに強く惹きつけられてしまいました。
彼女の口にする言葉の1つ1つに、ちゃんと重みがあった。
また、個人的に本作の好きだった要素が、ソフィの友人のフランシェスカ。
ソフィのライバルを自称する金髪ツインテドリルというコテコテお嬢様キャラなんですが。
これが見ててすっごく楽しいんですよ。
言葉こそライバルと張り合っては絡んでくる面倒な人のそれなんですが、ソフィの迷惑にはならないように最大限の配慮をしたり、ソフィの実力を誰よりも認めるからこその信頼が言動の節々に見せられて「あ、これただ好きな友達にかまってもらいたいだけの人だ」と思うと途端に微笑ましくなったんですよね。
魔法図書館での友達に渾名で呼んでもらう方法の本のくだりめちゃめちゃ好きでした(笑)
そんなわけで、しっかり感動できる短編作品。
キャラ一人一人の想いに強く魅せられる作品でした。
これはすごく良かった!
総評
ストーリー・・・★★★★ (8/10)
設定世界観・・・★★★★ (8/10)
キャラの魅力・・・★★★★ (8/10)
イラスト・・・★★★★ (8/10)
次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)
総合評価・・・★★★★(8/10) 全編通して感動で満たされていた作品!
※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。
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最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。