ぎんちゅうのラノベ記録

主に読んだライトノベルの感想を書いています。

【新作ラノベ感想part144】白き帝国

 今回の感想は2024年2月のガガガ文庫新作「白き帝国 1 ~ガトランド炎上~」です。

白き帝国 1 ~ガトランド炎上~ (ガガガ文庫)

※画像はAmazonリンク

 

 

あらすじ(BWより引用)

 これが犬村ファンタジー戦記の到達点!

 

「全ての色彩を重ね合わせると、白になる。ぼくが作るのは、全ての種族がひとつにまとまった『白き国』だ」。

 異なる種族同士が争いをつづける葡萄海。頭部に猫耳を持つ「ミーニャ」族が支配するガトランド王国の第二王子トト・ガトランドはある日、敵対する黒薔薇騎士団から人質として送られた少女アルテミシアと出会う。はじめは心を閉ざしていたアルテミシアだが、トトや仲間たちとの交流を経て、徐々に笑顔を取り戻していく。しかし人間とミーニャの間には根深い差別意識があり、淡い恋心を抱きはじめたトトとアルテミシアにも残酷な運命が降りかかることに……。

 甲冑に身を包んだ騎士が率いる大軍、海原を埋め尽くす帆船艦隊、「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の聖珠を持つ八剣士、瘴気機関を轟かす機械兵、高度五百メートル限定の「浮遊圏」を飛ぶ飛行艦隊――「とある飛空士」シリーズ、「プロペラオペラ」の犬村小六が圧倒的筆力で描く、かつて誰も見たことのない戦場と恋の物語。

「いかなるとき、いかなるところ、万人ひとしく敵となろうと、あなたを守る楯となる」。

 唯一無二の王道ファンタジー戦記、開幕。

 

感想

 これはとても良かったです。

 戦争に容赦など一切ないと言わんばかりにガツンと来る作品でした。

 

 本作は種族間同士の戦いが続く中でガトランド王国が、大陸支配に王手をかけたような状況からのスタート。敵国、黒薔薇騎士団から娘のアルテミシアを人質として引き取り、彼女とガトランドの王子王女たちとの交流の日々から始まっていくのだけど……。

 サブタイトル、そして冒頭から示される”終章”によって予め提示されている「ガトランド炎上」の文言。すなわち、この王国は滅亡するわけです……。

 

 それが分かった上で読む。

 これが、まぁーーー、心に来るわけですよ。

 王子トトからアルテミシアに向ける想いや言葉の数々。天真爛漫で場を華やかにしてくれる王女ルルや、厳しい言葉を口にしながらも弟妹たちを大切にしている第一王子のガガ。さらにはアルテミシアの従者である人狼ラギーと盲目の王女シュシュの運命的な邂逅。騎士の一人であるジャンジャックと、彼が見つけた神話の魔王を騙る謎の少女ルシファー。

 ともすればカプ厨の胸をくすぐるような微笑ましい日常が描かれれば描かれるほどに「戦争扱ってる作品でこんなの描いたら、これからこいつらの誰かは〇にますよ!」って堂々と宣言しているようじゃないか、と。そうなったらもう、誰だ誰なんだとハラハラしながら見守るしかないわけで……。

 ほら、某御大将だって言うでしょう。「戦場でなぁ、恋人や女房の名前を呼ぶ時というのはなぁ……、瀕死の兵隊が甘ったれて言うセリフなんだよ!」って。戦争モノにそういう感情や、関係性を匂わすようなやつはダメなんですって。それやって生き残れるのは、本当にごく一部。あるいは、そもそもそのキャラたちのラブをメインにした作品だけ。

 だからハラハラしているのは事実だけど、ある程度察しがついてしまう部分は十分過ぎるほどにあって……、察しがつくからこそ読むのが怖くなってしまうという。

 

 更に、本作では固有の異能力として。

 仁・義・礼・智・忠・信・考・悌

 というもの存在していました。これは、聖珠というものによって継承され、継承者が亡くなれば再び聖珠となるというシステムらしく。

 王子王女たちにそれらは引き継がれるわけですが。これももう完全にヤバいフラグがビンビンですよね。だって読んでいると分かりますが、王子王女は本質的に戦争を知らないんですから。それなのにそんな特別な力を与えても……。

 実際この異能力も戦況を大きく偏らせるほどの力はあれど、一人で戦争の勝敗に直結できるほどの力ではないのが分かってくるから余計に現実の厳しさを重くさせてくるわけで……。

 

 それにどれだけ戦いが優勢であろうとも、どれだけ優れた能力があろうとも。戦争なんてものはたった一手で戦況がガラッと変わるものだし、一度均衡が崩れたらそこからは一方的な蹂躙だけが待っている。

 そして今回その悲劇に見舞われるのは、最初から示されているガトランドの王子王女たち。

 そうなってくると、これはまさしく逃れられない運命の過酷さを読者に押しつけてくるようでした。ものすごーく心にズッシリ来ますよ……、でもやっぱり面白い。

 

 

 

 それから。

 本作を読んでいて、すごく読みやすいな、と感じたことを少し話しますと。

 ページ数は500ページオーバー。内容も様々な思惑の交錯する戦記モノ。それだけでなかなか読書カロリーは高そうなものですが、意外や意外、本作はかなり読みやすかったです。

 

 その理由はおそらく「読者が持ち続けなきゃいけない情報量が少ない」ということにあったと思います。

 これは作品そのものの中身が濃いとか薄いとかいう話ではなく。伏線や複雑な設定といった、読者が読むにあたって常に頭の片隅に置いておかなければならないもののことで。

 それがこの作品では非常に少なかった。

 最初にも言ったように、本作は予め結末が提示されている。そして、主要キャラの関係性は序盤で一目で見て分かるように描いてくれる。それぞれのキャラの思惑や、それ故の行動や発言はいたずらに曖昧にすることなく話の流れに即してハッキリ描いてくれる。

 更に言うなら、本作には変なキャラが少なかったというのもあるかと思います。戦争の悲しさや怒り、種族間の差別意識。そういったものがある世界であれば、当たり前の感情を持って動くキャラばかり。だからこそ、誰が何をしても「確かにこいつはこういうことをしてもおかしくないぞ」と言動を素直に受け入れることができました。

 この作品は終始そういう風に描かれているから、基本的には読者がずーっと目の前の状況に集中できるようになっていたように感じました。これが”読みやすい”という感覚になっていたのかなと。その上でしっかりと衝撃を与える展開や悲劇が襲ってくるから、読者の心にしっかり重くのしかかったのだと思ってます。

 

 あと最後に、これはもう一切詳細は言いませんが。個人的に、アルテミシアとラギー、好きなキャラでした。

 

総評

 ストーリー・・・★★★★ (8/10)

 設定世界観・・・★★★★ (8/10)

 キャラの魅力・・・★★★★ (8/10) 

 イラスト・・・★★★★ (8/10)

 次巻以降への期待・・・★★★★ (8/10)

 

 総合評価・・・★★★★(8/10) 可愛い白髪の女の子の表紙でわたしみたいな読者を釣って、精神に多大なダメージを負わせる作品!(もちろん、あらすじも見てそれを承知で買って読んだわけですけどね)

 

 ※星評価は10段階。白い☆で1つ、黒い★で2つ分。★★☆だと評価は5、★★★★★だと評価は10ということになります。基本的には「面白さ」よりも「わたしが好きかどうか」の評価になります。評価基準に関しての詳細は以下のリンクより。

新作ラノベ感想の「総評」について - ぎんちゅうのラノベ記録

 

 最後にブックウォーカーのリンクを貼っておきます。気になったらチェックしてみてください。

bookwalker.jp

 

 

余談(※超ネタバレアリ)

 最後に、ネタバレを含みすぎてて感想に書けなかったことを書きます。

 他作品の話も含みます。

 文字も白色にして最大限の配慮をします。

 

 これ以降読むのは自己責任でお願いしますね。

 

 

 では、早速。

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 個人的に、本作で最後に来るかな来るかなと身がまえていたモノがあって。

 それが王様たち三人の生首を並べるのを見開きページで挿絵描くとかいう直視するのも辛いやつ。

 個人的に生首という意味では、アカメが斬るチェルシーが本当にトラウマモノでしてね……。明るくムードメーカー的女の子のそういう姿を見るというのは、本作のルルがまさしくそれじゃんって……。それだけはやめてくれぇ、と思っていたから、無かったのが本当に良かったと思って……。

 トトは……、まぁ男だしね。うん。別にいいかな。鉄血最終話でルプスレクスの首が掲げられたくらいの精神的ダメージで済みますから。

 

 でも、もしかしたら今後あるかもしれない。

 と、思うと恐ろしいので、少しだけ今後の展開を考えてみると……、どうなんでしょうね。今回命からがら生き延びたガガたちが、理想の白き帝国へと至れるのであればこれ以上の被害はなく、むしろアルテミシアの方こそ首晒されそうな勢いしてますが……。逆に本当にどんどん全滅へと近づくのなら……。想像するだけでやっぱり怖いからやめましょう。

 

 それはそうと。

 今回、わたしはメロンブックスさんで買って、その特典SSも読んだわけですが、これがまぁーーー大変良いものでしてね。本編では内通者という立場でバレないように立ち回っていたために描けなかった序盤日常シーンにおける、アルテミシアの内心めちゃめちゃ口悪いのがツボりまくるのですよ。

 今後はこの苛烈な性格が常に出てくるでしょうし、そうなったら完全に悪役というか、救いようのない子に見えてますし。仮に心境に大きな変化を及ぼす何かがあったとしても、それで簡単に救われるってことはないでしょうし。はてさてどうなることやら。

 でも正直、この子はこの子で時代の被害者感はありますよね。そういう風に育てられたのはあれど、普通に考えて戦争の敵国にいきなり連れられて、自国を散々追い詰めてる異種族に仲良くしようって言われても無理でしょうし。相当家族に冷遇されて、居場所なくて、他国に来てようやく救われるみたいなシンデレラストーリーでもない限りあんな最初からおしとやかで可愛い女の子なんてものはいないんだよなぁ。

 と、そういう意味でやっぱりわたしはこの豹変ぷっりっというか、本音ぶちまけながらめちゃくちゃやりだしてからのアルテミシアというのが見てて面白いから好きなんですよね。因果応報があるなら、マジでこの子がいちばん首刎ねられそうだけどね。

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